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 3年前の「関東・東北豪雨」で鬼怒川が氾濫(はんらん)し、市の3分の1が浸水した茨城県常総市の被災者に全国から講演依頼が続々と集まっている。西日本豪雨など、毎年のように水害が発生し、逃げ遅れる人が絶えない。どうしたらいいかのヒントを被災者の体験から見つけようとしている。9月10日で常総水害から3年になった。

 長野市柳原地区の小学校で8月19日、地区の防災講演会が開かれた。近くを流れる千曲川が氾濫すれば、地区内は想定最大で10メートル近い浸水が予想される。「もし、西日本豪雨のような想定外の雨が降ればどうしたらいいのか」。心配する藤牧俊郎・防災担当区長(63)が注目したのが、常総水害被災者の体験だった。

 講師役を常総市根新田自治区の須賀英雄事務局長(67)に頼んだ。須賀さんたちの自治区は3年前の水害で大半の家が床上浸水したが、区独自に運用するショートメールの一斉送信サービスを使って住民に直接避難を呼びかけ、逃げ遅れがほとんどなかったからだ。

 「私たちもまさか鬼怒川の水が自宅に来るとは思わなかった」と話す須賀さんに、約300人の参加者は聴き入った。「最近の異常気象に過去の経験は通用しない。どのタイミングで避難を決断するか、自分で判断することが必要です」

 そして参加者全員で自分がいつ、どうやって避難するかを事前に決める「マイ・タイムライン」作りに取り組んだ。常総水害を踏まえて国が考案したものだ。参加者から「避難を決断するタイミングが分かった」「家族や子どもに教えたい」との声が出た。藤牧さんも「実体験が多くの住民の心に届いた」と話した。

 須賀さんたちには今年度、同様の講演依頼が神奈川県茅ケ崎市や千葉県野田市、埼玉県羽生市など、10の自治会や自治体から来ている。このうち9カ所は7月以降に開催され、県外が8カ所を占める。「特に西日本豪雨があった7月以降、全国から来るようになった」と須賀さんも驚く。背景には「大きな水害がなかった所でも起き、ひとごとではなくなってきた」(茅ケ崎市)という危機感がある。

 「想定外の降雨や線状降水帯など、いずれも常総水害から始まったと思う」と須賀さんは振り返る。「被災はつらい。できれば思い出したくない。しかし、だからこそ多くの人に知ってもらい、次の防災に役立ててもらえたら」と、可能な限り受けたいという。(三嶋伸一)

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 〈常総水害〉 2015年9月9日から11日にかけて、「関東・東北豪雨」が発生した。台風18号から変わった温帯低気圧に湿った空気が流れ込み、線状降水帯が多数発生。栃木県日光市で観測史上最多の551ミリの24時間雨量を観測し、鬼怒川は茨城県常総市内の2カ所で堤防が崩れ、水があふれた。市によると6千棟以上が浸水し、関連死を含めて14人が死亡した。