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 一橋大学長や政府税制調査会長などを歴任し、今月25日に81歳で亡くなった石弘光さんは、2008年から10年間、朝日新聞のコラム「経済気象台」で、「安曇野」のペンネームで執筆を続けていました。絶筆となった今年6月27日付のコラムを紹介します。

国民の政治不信

 9月の自民党総裁選が次第に話題になりだした。「安倍一強」の下、安倍晋三首相の3選確実と思われていたが、最近はその見通しが難しくなってきた。首相はカジノ実施法案など内政面で様々な問題を抱えているが、G7サミットや米朝首脳会談など外交面での成果を強調し、一時低迷した内閣支持率は回復している。

 ところがその背後で、国民の政治家や官僚に対するいらいらした不信感は必ずしも払拭(ふっしょく)されていない。これは言うまでもなく、過去1年半のあいだ繰り広げられてきた森友・加計問題によるものである。官邸、与党、関連官庁は幕引きしたがっているが、国民の多くは何も解決されていないと感じている。

 森友・加計問題は、まさに首相と昭恵夫人の個人的な関与が指摘されている問題である。このもみ消しのために官僚がどれだけ迷惑を被ったか、有為な人材がどれだけ犠牲になったか計り知れない。それなのに、われ関せずの首相の不誠実な態度に怒りを覚え、首相が国会答弁で真実を語っていないと感じている国民は少なくないはずである。

 6月の朝日新聞の世論調査によると、森友問題に決着がついたと思うかの問いに、79%が「決着はついていない」としている。また安倍首相は加計学園理事長との面会を否定しているが、その説明に75%が「納得できない」と答えている。森友・加計問題で国会は引き続き「解明に取り組むべきだ」が57%と半数を超えている。

 この問題を放置すれば、わが国の倫理観が喪失しかねない。外交成果や、ほかに重要な法案があると強調するあまり、国民の政治不信を未解決のままうやむやにしてよいものだろうか。(安曇野)