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 西日本豪雨で一帯が浸水した広島県三原市と岡山県倉敷市真備町ではあの日、真っ先に救助にあたるはずの消防署が水没し、出動できなかった。浸水の危険性はあっても住民に近い町なかで待機するか、被災のリスクを避けて高台に拠点を置くか――。関係者たちはジレンマに頭を悩ませている。

 「赤ちゃんが3人おるんです」

 広島県南東部を流れる沼田(ぬた)川の氾濫(はんらん)で広範囲に水没した三原市高坂町。7月6日午後10時過ぎ、2階建てのコーポの1階に取り残された男性会社員(42)は、携帯電話で119番通報し、声を張り上げた。

 床上まで浸水し、近くの3世帯とともに2階の隣人宅に避難した。身を寄せ合った18人の中には、男性の生後5カ月の三男を含め、乳児が3人いた。「ミルクもおむつも薬もない。泳いで取りに行くから、消防のボートだけでも貸して」と訴えたが、1キロほどしか離れていない市消防署西部分署からは救助が来ない。

 男性は10回以上通報した。「助けに来られるようになったら連絡を」「水で車を出せんのです」。消防との押し問答は、明け方まで続いた。

 男性は朝を待ち、近くの住民宅まで泳いでゴムボートを借りてきた。18人全員が救助された時には昼になっていた。結局、消防隊員は救助に来なかった。

 それもそのはず。沼田川そばの西部分署も浸水していた。6日午後9時40分ごろ、消防車6台と救急車2台を隣の工場の駐車場に避難させたが、十数分で8台すべてと署の1階部分が冠水した。

 市消防本部によると、担当する三原、尾道両市の住民からの119番通報は、雨が本格化する前の5日は41件だったが、6日は455件、7日には1175件と急増。西部分署以外の消防隊員も道路の冠水などで出動できず、ゴムボートで被災者宅を一軒一軒回った。

 西部分署の水没した8台だけでも計2億7千万円の損害という。

救助される側に

 消防署が水没し、救助される側になったケースもあった。

 広範囲の浸水で、51人が亡くなった岡山県倉敷市真備町地区。鉄骨2階建ての玉島消防署真備分署は建物も消防車も水没した。同分署の小寺昭夫警防主幹(50)によると、7月7日午前3時ごろに1階の事務所に水たまりができてから、わずか7、8分で水位は腰の高さまでに達した。

 1階にあった通信機器や消防車両2台、消防服などが水にのまれた。避難してきた住民3人を含む計21人は屋根の上で救助を待った。

 午前5時ごろ、空が明るくなると辺りは「一面茶色の世界」だった。民家の屋根に避難した住民ら数十人が救助を求めてライトやタオルを振るのが見えた。小寺さんは「すぐそこに見えるのに助けにいけないなんて」と当時を振り返る。

 午前7時ごろまでに、ゴムボー…

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