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 宝塚歌劇で10度目となるミュージカル「エリザベート」の幕が開けた。黄泉(よみ)の帝王トートを演じるのは、月組トップスター珠城(たまき)りょう。若い力みなぎる月組が、愛と死の物語をエネルギッシュにつづっている。

 19世紀オーストリア、ハプスブルク帝国のたそがれを生きた皇妃エリザベートと、彼女を愛し死に誘うトートの姿を、現実と幻想を織り交ぜながら美しい旋律で紡ぎ出す。

 日本初演は、1996年の雪組。初演から潤色・演出を手がける小池修一郎は「22年前には生まれていなかった子たちも多い。新しい血が入ることで、作品が細胞のように活性化させられる」。ファンに強く支持されて、これまでの上演回数は千回を超え、観客動員も240万人を記録している。今作も全日程のチケットが完売した。

 10代目トートの珠城は、入団11年目の若きトップ。史上最も下級生でのトート挑戦となる。健康的で明るいキャラクターだけに、本人も「自分に来るとは思っていなかった役」と驚いたという。「存在の大きさ、ハプスブルク家を手中におさめ、世界を支配するエネルギーを出していきたい」とトート像を描く。大きな手の動きや高身長で着こなす丈の長い衣装が、舞台上で効いている。

 対するエリザベートはこれがサヨナラ公演の愛希(まなき)れいか。無邪気な少女時代はみずみずしく、皇帝フランツ(美弥るりか)と結婚してからは意志を貫こうとする皇妃を力強く演じている。2人が対峙(たいじ)すると、死の影がまとわりつくというよりは、鏡あわせになったエネルギーのぶつかり合いを感じさせる。

 物語の狂言回しの役割も担う、暗殺者のルキーニ役の月城(つきしろ)かなとは、明瞭なセリフ回しとキレのある表現。自身をエリザベートと思い込むヴィンディッシュ嬢を演じた海乃美月(うみのみつき)の演技も光った。

 今回はベテランがそろう専科からの出演はなく、月組生だけで作り上げた。「歌に特化したスターではない月組のメンバーたちが、そこを頑張り、演技で埋めていくことで、進化のプロセスをさらに見られると思う」と小池。まだまだのびしろはある。

 宝塚大劇場で10月1日まで。(尾崎千裕)