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 「学生はどう動けばいいか悩むだろうし、現場は混乱するだろう」

 経団連の中西宏明会長が、就職活動にかかわる指針を廃止する方針を打ち出したことを受け、法政大キャリアセンターの内田貴之課長はこう心配する。

 現在の指針は、3月に説明会などの広報活動を、6月に面接などの選考を解禁すると定めている。大学の団体でつくる「就職問題懇談会」の昨年の調査では、5月までに選考を始めた「解禁破り」の大企業は56・4%に上り、39・7%が内々定を出すなど形骸化が指摘されているが、内田課長は「目安があったほうが、大学側も学生も動きやすい」と指摘する。

 就活塾「就活コーチ」(東京都)代表の広瀬泰幸さんは、人気企業の採用が終わらないと、他の企業の採用も終わらない可能性があるとみる。「学生は就活をいつスタートし、いつ終えればいいのかわからなくなるのでは」と話した。

 就活の長期化による学業への影響も懸念される。東京都の私立大3年の女子学生(20)は「目安があったおかげで就活スタートまでは学業に専念できる」と語る。ただ、3年生になってからは準備も含め就活が忙しく、勉強に支障が出ている学生も周囲にいる。「就活が長期化すると、もっと影響が出てしまう」と話す。

 文部科学省も学業への影響を考慮し、就活のルールについて経団連と話し合いながら決め、企業側に指針順守を要請してきた。それだけに、同省幹部は中西会長の発言について「事前に何も聞かされていない」と驚きを隠さなかった。「指針がなくなれば、就活が無期限に延長され、大学側も講義日程が組みにくくなる。大学側の意向も聞いて議論してほしい」と注文した。

 関西の大学でも驚きが広がった。立命館大キャリアセンターの担当者は「就職協定は、学生の学びの時間を保障してきた。学びの集大成として大学時代の終盤に仕事を選べるようにする役割もあった」と話す。協定の廃止について、「経団連は1年生から採用させるつもりなのだろうか。1年生と4年生ではキャリア観が全く違う。仕事に対する考え方を深めないうちに採用されるとミスマッチが増える」と指摘した。

 近畿大キャリアセンターの担当者は「多くの学生は勉強と就活の切り替えをしているのが現実で、就活開始の目安がなくなると迷うかもしれない」と懸念する。ただ、「『通年採用』のようになれば、自分は将来、どう働きたいのかということを常に考えるようになり、マイナス面ばかりではないのでは。変化に合わせて大学の支援も考え直さなくてはならない」と話した。