100キロ背負い尾瀬を行く 25歳のルーツは「海」
はるかな尾瀬。広大な高層湿原やミズバショウとともに「尾瀬ならでは」と言えるのが、たくさんの荷物を背負って運ぶ「歩荷(ぼっか)」と呼ばれる人たちだ。
「重いし、肩が痛くなるので、自分のペースで焦らずに歩きます」
歩荷の萩原雅人さん(25)は両腕を前に組み、荷物を積む仕事道具「背負梯子(しょいばしご)」を背中に密着させて進む。身長168センチ、体重63キロの萩原さんが大きな荷物で、小さく見える。
背負う段ボールやカゴは15個ほどで、積み上げた高さは約2メートル。中身はレタスやトマトといった生鮮食品や缶ビールで計100キロにもなる。
歩く時は転ばないこと、無理をしないことが大事だという。心を無にして集中し、5~10分歩くと、肩がしびれる前にベンチや木道に座って一休みする。
8月末のこの日はいつも通り、尾瀬の玄関口・鳩待峠まで車で荷物を運び、午前7時から歩き始めた。道のりは尾瀬ケ原の入り口にある山ノ鼻の至仏山荘までの約3・3キロ。石が敷かれた道や木道の下り道は前日の雨で滑りやすいが、スタスタと進んでいく。聞けば、踏む石はいつも同じだという。
ハイカーに会うと、注目の的だ。「すごい!」「歩荷さんに会えた!」。標高約1500メートルのブナやミズナラの森に歓声がわく。「女の子に声をかけられると元気が出ます。尾瀬は年配の人が多いけど」と軽口も飛び出す。
至仏山が目の前に広がる休憩ポイントではボーッと風景に見入った。スノーボードが好きで積雪期にはガイドもする萩原さん。どう滑ろうかと想像を膨らませる。「夏の地形を確認できて、トレーニングもできる。尾瀬で働く特権です」
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尾瀬の歩荷はいま、最年少の萩原さんから51歳のベテランまで男性6人。萩原さんは今年4年目で、唯一の地元・群馬県片品村の出身者でもある。
といっても、学業を終えてす…