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 薬になるべく頼らず、ケアを充実させることで認知症の人の症状をよくしようという考え方が広がっている。幻覚やうつ、妄想などに対し、一人ひとりの行動の背景を探って介護計画を立て、介護に携わる専門職が情報を共有する。抗認知症薬をあえて使わないケースも増えている。

幻覚やうつ、ケアで対応

 認知症に伴う幻覚やうつ、妄想などの行動心理症状は「不可解な問題行動」と捉えられ、場合によっては向精神薬や抗精神病薬で症状を抑える方法がとられてきた。だが、最近は認知症の人が感じている極度の不安などから起こる「意味ある行動」と考えられるようになってきた。

 東京都医学総合研究所(世田谷区)は2016年、薬を使わずに行動心理症状に対応する在宅用のケアプログラムを開発した。認知症の高齢者一人ひとりの状態を把握し、介護職員が情報を共有。職員ごとに異なる対応にならないよう、その人にあった介護をする。認知症の高齢者283人が参加した臨床研究で症状の軽減効果が実証された。

 東京都内の女性(78)は自宅で一人暮らしをしていた2年前、家の片付けができなくなり、近所の人から地域包括支援センターに相談があった。アルツハイマー型認知症と診断され、16年9月からプログラムに参加した。

 当初は、ホームヘルパーが家に来ると常に部屋の中を歩き回ったり、片付けようとすると「触らないで」「なんで自分でできるのに来るの」と怒ったりした。そこで、ケアマネジャーや介護職員が集まり、女性の症状について話し合った。「急に怒り出すか」など約90項目について症状を分析。女性の場合、最初は「うつ・不快」「不安」「多動」などの項目が高かった。

 ケアマネジャーらは「ヘルパーの来訪やデイサービスの送迎が、自分の生活を脅かす存在に感じていたのではないか」と考えた。介護の際には手をつないで歩き、デイサービスはいつも同じ職員が迎えに行くことを徹底した。

 女性の好みも考慮した。ピンクや花柄の物が好きなことがわかり、家の鍵の紛失防止にかわいいキーホルダーを付け、ピンクの皿に置くようにし、好みの洋服を着るようにして外出しやすくなるよう工夫した。さらに、男性アイドルグループの歌を口ずさむのをホームヘルパーが聞き、介護職員らで情報を共有して女性との会話に生かした。

 現在はグループホームで暮らす女性は行動心理症状はほとんどなくなった。ホームの訪問者のためにお茶を入れ、笑顔が絶えない。女性は「ここへ来て良かったねえ。楽しいです」と話す。

 ケアマネジャーの小野深喜さんは「女性の表情が生き生きした。プログラムが職員の意識を変えた」と話す。プログラムを開発した、東京都医学総合研究所の西田淳志さんは「人生の文脈の中で何が重要なのかは人それぞれ違う。個別のニーズをくみ取り、ケアに生かせば行動心理症状は軽減する」と話す。

■薬を減らす…

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