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 台風21号が西日本を通過して一夜明けた5日、各地で爪痕が明らかになった。各警察によると、大阪、滋賀、愛知、三重で計11人が死亡。総務省消防庁のまとめでは、大阪や愛知など21府県で計292人が負傷し、住宅被害は、大阪をはじめ17府県で一部損壊や床下浸水など計317棟に上った。停電は午前10時時点で近畿の約54万戸で続いている。高潮による冠水や連絡橋へのタンカーの衝突で約5千人が孤立した関西空港では、高速船とバスによる島外への輸送が始まった。21号が向かった北海道では強風に見舞われ、大しけになる見通し。

高速船乗り場に千人以上の列

 「ようやく帰れそうになって、少しほっとしています」

 5千人が取り残された関西空港。関空島の旅客ターミナルでは5日早朝、高速船が到着する船乗り場へ向かうバス乗り場に千人以上とみられる行列が出来ていた。その中の一人、兵庫県姫路市の会社員、高橋浩美さん(34)はこう話していた。仕事で中国から4日に帰国したが、台風21号による被害に見舞われ、関空で一夜を明かすことに。関空では停電も生じていたため、「暑くてほとんど眠れず、疲れている」とも。

 午前6時過ぎ、高速船の初便が関空を出発。定員110人の船を臨時に3隻使い、15~20分おきに神戸空港との「ピストン輸送」で利用客を救助する計画だ。

 岡山県の実家に帰省するため4日に関空に到着した仏在住の主婦、藤原美希さん(37)は2歳の息子と空港内のソファで一夜を明かした。「小さい子を連れて眠る場所を探すのがしんどかった」。高速船に乗り込み、「やっと帰れる」と安心した様子だった。

 旅客ターミナルは5日午前もほぼ全フロアが停電。空調も復旧していない。知人の結婚式でハワイに行く予定だった兵庫県明石市の会社員女性(26)は「ベンチで横になったが、暑くて寝苦しかった」とうんざりした様子。携帯電話やインターネットもつながらなかったという。

 韓国から来た大学生のスンヒョン・リーさん(27)はコンビニの長蛇の列を見て買い物はあきらめ、配られた水とビスケットで空腹をしのいだ。今後は夜行バスで東京へ移動し、帰国便を探す予定だ。「昨日までは最高の旅行だったのに……。温かいラーメンを食べて横になって眠りたい」

 午前6時50分ごろには、関空からの高速船が神戸空港に到着。利用客が続々と船を下りてきた。

 神戸市北区の女子大学生(20)は4日、大学の海外研修でカナダ・バンクーバーへ出発するはずだった。関空では4日午後5時ごろから電気が消え始め、真っ暗になったという。「台風で飛行機が飛ばないのは仕方ないし、停電はすぐ復旧すると思っていた。食料が配られたとき、ようやく大変なことだと気づいた」と話した。

 ソウルから大阪市に観光に訪れていた韓国人男性(39)は、「日本に来るのは初めて。空港では情報が把握できず、本当に困った。神戸から韓国への帰り方もわからない。どうすれば……」と疲れ切った表情で話した。