【動画】広島市にある元遊郭の一楽旅館=小原篤撮影
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 「泊まれる遊郭」というので、実際に記者も一晩泊まってみた。テーブル、テレビ、鏡台などがある簡素な6畳間。トイレ、バス、洗面所は共同なので、各部屋にはない。

 通されると既に布団が敷いてあり、それを目にしたときドキリとしてしまった。旅館なら普通のことなのだが、「元遊郭」というのが頭にあったからだろう。使い込まれた感じのL字の衣紋掛けを見ても、「ああ、まず客から受け取った上着をここにかけて……」といった想像が働いてしまう。

 窓は当然アルミサッシなどでなく木枠で、しかも古いからすき間が空いているが、エアコンの利きはよかった。冷たいお茶を飲んでテレビを見ていれば、普通の旅館と変わらぬ居心地だ。

 一楽旅館の周囲には、いわゆるB級グルメ的な飲食店が数多く並んでいる。近くの川沿いを歩けば、食事もできるおしゃれなカフェがリバーサイドに並んでいる。

 今回の広島出張は、8月23~27日に開催された「広島国際アニメーションフェスティバル」という映画祭の取材を兼ねていた。夜の上映を見終え、食事をして宿に戻ると、フロには先客がいた。1階の池を囲む廊下のすぐ奥に家庭用サイズのものが一つあるだけで、「男湯」も「女湯」もない。

 8月の広島は夜でも暑い。シャツは汗でベットリで、すぐにサッパリしたいところだが、ここが「フロ共同」のつらいところだ。部屋に戻ればいつフロが空くか分からない。別のお客さんが先に入ってしまうかも……。

 吹き抜けの回廊は外気が入り込み少々蒸し暑いが、腰を下ろして待つことにした。普通の旅館ならまずできそうもないが、池と回廊があれば「ここでちょいとひと休み」もアリだ。涼しげな水音をBGMにして、すいすい泳ぐニシキゴイに「おっ、昼間より元気がいいなー」などと話しかけていたら、フロからTシャツと短パンの男性が出てきた。

 池のコイを眺めながらフロを待つ。この旅館ならではの、おつな時間の過ごし方だった。(小原篤

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