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 「家族の物語」と聞くと、揺るぎない絆を描いた心温まるストーリーを想像するが、5年ぶりに再演するハイバイの「て」はちょっと違う。「ちりぢりになった家族が再集合し、なんとかしようとしたら、前よりちょっと仲悪くなって終わる」。作・演出の岩井秀人が自分自身を投影した物語は、どんなにいびつでも切っても切れない家族の関係性を描く。

 10代から数年間の引きこもり経験を下敷きにした旗揚げ作品「ヒッキー・カンクーントルネード」(2003年)など、実体験をもとにした作品を書いてきた。「て」も、認知症の祖母にひどく当たる長男や、暴力的な父親ら、登場人物は岩井自身の家族がモデルになっている。

 創作のきっかけは、認知症の祖母をなじる兄への憤りだ。“悪行”の数々を面白おかしく書くつもりが、母に聞くと、状況を全く違うように捉えていた。兄は誰よりも祖母にかわいがられていただけに、変化を受け止められなかったのではないか、というのだ。

 「兄をもっと悪者にしようとしていたのに、僕は困った。自分がいかに自分の目線でしか物事を見ていなかったか、その分析をするためだけに書いた」。劇では、家族のいさかいが連鎖する同じシーンを、視点を変えて2度繰り返す。

 上演は08年の初演から4回目。もともと自身の「セラピーのよう」だった作品は、再演を重ねるにつれて違った手触りをもつようになった。「お客さんが作品に自分の人生を重ねてくれていることに驚いた。とにかく個人的なこととして捉えていたものが、誰かに寄り添うものになったのは不思議な感覚がする」

 母親を男性俳優の浅野和之が演じる配役や、ステージを挟んで向かい合う客席の配置もユニークだ。

 22、23日、兵庫県伊丹市のアイホール(072・782・2000)。一般前売り3800円、当日4千円。(岡田慶子)