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 東京電力福島第一原発事故をめぐり、業務上過失致死傷罪で強制起訴された東電旧経営陣3人の第24回公判が5日、東京地裁であった。同社元会長の勝俣恒久被告(78)らが2008年、国の専門機関による地震予測に基づく津波対策を同原発で実施する方針をいったん了承しながら、後から先送りしたという、東電元幹部の供述調書が証拠採用され、全文が法廷で読み上げられた。

 検察官役の指定弁護士は「被告らは、津波対策の必要性を認識していながら先送りした」と主張しており、今回の調書はこれに沿う内容だ。一方、弁護側は「国の地震予測は信頼できず、対策の方針は決まっていなかった」などとして争っている。

 採用されたのは、同社で原発の耐震対策を担う地震対策センター長だった山下和彦氏が12~14年、検察官に行った供述を記した調書。当初は山下氏の証人尋問が行われる予定だったが、「法廷で証言ができる状態ではない」として、永渕健一裁判長が調書を採用した。

 朗読された調書によると、東電は当初、国の専門機関が02年に公表した「長期評価」を踏まえた簡易計算で、7・7メートル以上の津波が福島第一原発に押し寄せると想定。山下氏が08年2月、勝俣氏らが出席した「御前会議」で長期評価を考慮した津波対策を示したところ、反対されずに了承され、同年3月の常務会でも認められたという。

 しかし、東電の子会社が長期評価を基に詳細な計算を実施したところ、津波高は同原発の主要施設があった敷地の高さ(10メートル)を超える、15・7メートルに達する可能性があると判明。この数値は同年6月、東電幹部らに報告され、同年7月には原子力・立地副本部長だった武藤栄被告(68)が、長期評価に基づく津波対策の先送りを指示したという。

 調書によると、東電幹部らの間では方針転換の理由について「大規模な対策工事が必要となり、国や地元への説明がつかず、原発の停止を迫られるおそれがある」との認識があったという。山下氏は「想定される津波高が10メートル以下なら、国の地震予測を踏まえた対策を直ちに取っていただろう」とも供述していた。

 東電旧経営陣を刑事告訴した住民らの代理人を務める海渡雄一弁護士は公判後の会見で調書について「幹部が、東電の内情をここまで述べていたとは驚いた。対策が出来ないから何もしないという異常さがはっきりした」と話した。(杉浦幹治)