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 震度7を記録した北海道の地震とほぼ全域にわたる停電は、道内の経済活動にも幅広い影響を及ぼした。コンビニエンスストアやスーパーは一部が休業。営業を続けた店でも、物流網の寸断で品薄に陥った。飲料や食品、自動車部品の工場も生産がストップし、停止が長引けば影響が全国にも広がりかねない。

 コンビニやスーパーでは非常用電源を使うなどして営業を続けた店も多く、飲み物や食べ物を求める住民が列をつくる店もあった。

 道内最大手で約1100店あるコンビニ「セイコーマート」。運営するセコマ(札幌市)によると、停電などで約50店が休業した。ただ、ほかの店は非常電源装置を使ってレジを動かし、営業を続けた。冷蔵庫や冷凍庫は動かせないため、「カップ麺や菓子、飲料など温度管理がいらないものを中心に販売した」(広報)という。

 セブン&アイ・ホールディングスによると、セブン―イレブンは約1千店のうち約970店が一時停電したが、一部の店をのぞいて営業した。ただ、すでに品薄気味になっている。道内の物流拠点は停電で稼働が難しく、ANAホールディングスとの緊急時の協定に基づき物資や商品を輸送すると発表。6日夜には羽田空港から函館空港へカップラーメン1200ケースを空輸した。

 ローソンは6日午前の段階で道内664店のうち300店以上が停電で休業。235店(7月末時点)あるファミリーマートも商品供給を急いでいる。

 イオンは、まいばすけっとやマックスバリュも含めて道内で165店を展開しているが、6日は4店をのぞいて営業した。ただ停電で通常通りの営業はできず、建物の外で販売したという。道内にグループの食品製造施設はなく、他社から供給を受けているが地震後は滞っている。「空路のほか、フェリーをチャーターするなどして食品を現地に向けて運んでいる」(広報)とする。

 道内のイトーヨーカドーは11店のうち7店で午後5時まで建物外で営業し、常温で販売できる商品を中心に販売したという。

 百貨店では6日、臨時休業が相次いだ。三越伊勢丹ホールディングスは、三越札幌店や傘下の丸井今井札幌本店と同函館店について、「電力供給の状況をみて7日朝には営業再開するかどうかの判断をしたい」(広報)としている。東急百貨店さっぽろ店も「店の一部の電力は復旧したが、まだ供給が不安定。お客さまのことを考えるとなるべく早く営業再開の判断をしたい」。大丸札幌店も「交通機関が復旧しなければ難しい」とする。

 農業や畜産業が盛んな北海道は、全国の「食料供給基地」として大きな役割を果たしている。この機能にも、影響が出ている。

 大手乳業メーカーの道内の工場は停電で製造を停止し、再開のめどが立っていない。明治はチーズやバター、牛乳などを生産する7工場が停電し、原料の生乳の受け入れも止めた。

 ホクレン農業協同組合連合会によると、6日に集荷した生乳は、自家発電で動いているよつ葉乳業の2工場に集中して運んでいるという。北海道から茨城県に生乳を運ぶ専用船「ほくれん丸」は、6日も予定通り出港した。

 ただ、JAグループを束ねる全国農業協同組合中央会(全中)の比嘉政浩専務理事は、停電について「特に大規模な農業経営では電気施設に頼るところも多い。大きな影響がある」と指摘する。酪農は自動で搾乳する装置を使う生産者も多く、搾乳をしないと乳牛の体調が悪くなってしまう。自家発電機を備えている生産者も、重油の確保などが課題だという。

 野菜ではタマネギやジャガイモ、ニンジンなどの収穫期にあたる。停電だと野菜の集荷場なども動かせず、鉄道での輸送もできない。代替の手段を含めて対応を検討しているという。

 斎藤健農林水産相は6日の省内会議で「搾乳不可能な農場や、保存されている生乳の冷却ができずに廃棄されている農場が確認されている。水産物でも冷凍ができないことによる損失が生じている」と話した。

 乳製品以外にも、停電による食品加工工場の停止が相次いだ。カルビーでは、ポテトチップスやじゃがりこなどを製造する千歳市と帯広市の2工場が操業停止になった。マルハニチロは、サンマの缶詰や冷凍食品の製造・加工などグループを含めて11カ所ある道内の工場すべての操業を止めた。キユーピーも、液卵やポテトサラダをつくるグループの道内の4工場がいずれも操業できなかった。

 日清食品では即席めんをつくる千歳市の子会社の工場が操業を停止。伊藤ハム米久ホールディングスも、小樽市のハム・ソーセージ工場と札幌市の食肉加工工場の稼働を停止した。丸大食品は岩見沢市のハム・ソーセージの工場などの稼働を停止した。

 物流にも影響が出ている。日本通運は、道内で航空貨物を取り扱う七つの支店・営業所が全て停電し、道内全域での集配を停止した。日本郵便は、北海道発着の宅配便「ゆうパック」や小さな荷物用の「ゆうパケット」、「ゆうメール」の引き受けを停止。北海道発着の郵便物などの配達も大幅に遅れるという。

トヨタの子会社も操業見合わせ

 地震や停電で操業を取りやめる道内の工場が相次ぎ、工業生産への影響も広がっている。電気製品や自動車などの部品の生産を停止した工場も多く、操業停止が長引けば、サプライチェーン(部品供給網)が寸断され、企業の生産活動が滞るおそれもある。

 自動車の変速機やハイブリッド車の部品などをつくるトヨタ自動車子会社のトヨタ自動車北海道(苫小牧市)は6日朝から操業を見合わせている。停電が続き、建物の安全確認もできないため。東北や東海、九州をはじめトヨタの国内外の工場に部品を供給する拠点だが、同日夜以降、当面稼働を見合わせることを決めた。再開のめどは立っていない。愛知県などの工場でも同種の部品を生産しているが、稼働停止が長引けばトヨタグループ全体に影響が出る可能性がある。

 トヨタ系の主要部品メーカーにも影響が出ている。アイシン精機の子会社で、変速機やエンジン向けのアルミ部品を手がけるアイシン北海道(同)も操業を止め、生産設備の被害の有無などを調査中。車載用半導体センサーをつくるデンソー子会社のデンソー北海道(千歳市)も6日の稼働を取りやめ、7日も稼働しないことを決めた。設備などの点検を進めており、再開のめどは立っていない。

 トヨタは6日、東北から九州までトヨタ車を組み立てる国内18の自動車工場すべてについて、7日夕方以降に稼働するかどうかの判断を7日に先送りすることを決めた。部品調達の影響を見極めるため。子会社のダイハツ工業やトヨタ自動車東日本、トヨタ自動車九州などの工場も対象だ。

 トヨタ幹部は6日夜、「(トヨタ自動車北海道の)工場の被害はあまりなさそうだが、停電が解消し、被災した従業員の生活が戻らないと操業再開は難しい。代替生産はすぐはできないので、自動車生産にも影響が出るかもしれない」と話した。

 トラックのエンジン部品を生産しているいすゞ自動車子会社の苫小牧市の工場や、ボートなどをつくる八雲町のヤマハ発動機の子会社も操業を止めている。

 道内の電機各社の工場でも操業停止が相次いだ。京セラは、スマートフォンや光通信用の電子部品などを生産する北海道北見工場(北見市)の操業を停止。国内向けのスマホや携帯電話はすべて同工場で製造しており、操業停止が長引けば出荷への影響は大きい。電子部品については、滋賀県や鹿児島県の工場でも同種の製品を生産しており、「供給に直ちに影響はない」(広報)としている。

工場で火災も

 パナソニックも道内の2拠点で操業を停止した。スマホ向けの部品をつくる千歳市の工場と、車載用電子部品をつくる帯広市の工場で、取引先は海外にも及ぶ。「停電が長引くと生産や営業への影響が出てくるだろう」(広報)と気をもむ。

 新日鉄住金の室蘭製鉄所(室蘭市)は、6日未明の地震発生直後に設備点検のため生産ラインを停止した。自家発電設備を使って一部ラインは復旧したが、全面的な操業再開のめどは立っていない。棒状の鉄鋼製品を主に国内外の自動車部品メーカーなどに出荷しているが、「港や道路の被害状況も分からず、出荷にどれほどの影響が出るかを見通せる状況ではない」(広報)と心配する。

 同製鉄所に隣接する三菱製鋼の子会社、三菱製鋼室蘭特殊鋼の工場では午前4時ごろ、火災が起きた。停電で工場が停止して、特殊鋼を造る機械の内部の冷却ができなくなり、機械内部の余熱でベアリングの潤滑剤が発火したという。ごく小規模の火災で午前10時半ごろに鎮火し、人的被害もなかったが、停電の影響で操業停止が続いている。

 道内で盛んな製紙業にも影響が出ている。震源に近い日本製紙の北海道工場勇払(ゆうふつ)事業所(苫小牧市)と同工場白老(しらおい)事業所(白老町)は、地震の直後から生産ラインを停止。王子製紙も苫小牧工場(苫小牧市)の操業を止めた。いずれも全面再開の見通しは立っていない。王子製紙によると、在庫は1週間分ほどあるが、停電が長引けば出荷に影響が出かねないという。

携帯電話の不通、長引く可能性も

 地震による停電で、6日は北海道内の広い範囲で携帯電話がつながりにくくなった。通信を中継する基地局に影響が出たためだ。携帯各社は非常用電源で対応するなどしているが、停電が長引けば一部地域で不通が長引く可能性がある。

 基地局の多くは非常用バッテリーを備えるが、短いと数時間しかもたない。6日夕方の時点ですでに電源を失った基地局もある。非常用バッテリーがもつのは最長で24時間程度の場合が多く、7日未明以降、携帯電話が通じない地域が広がるおそれがある。

 各社は電源供給車で非常用バッテリーを充電したり、移動式の車載基地局を活用したりすることを検討している。ただ「停電規模が大きすぎるので、完全に対応するのは難しい」(携帯大手幹部)という。

 都市部では自家発電機を備える基地局もあり、その周辺では比較的通信しやすい場合もあるとみられる。ただ道内全域の電力復旧には1週間ほどかかる見通しで、総務省幹部は「人口が少ない地域を中心に、携帯電話が使えない状態が長引くおそれがある」と話す。

 NTTドコモ、KDDI(au)、ソフトバンクの携帯大手3社は、通話がつながりづらい場合に、文字や音声でメッセージをやりとりする「災害用伝言板」などの運用を始めた。しかし携帯電話の電波が全くつながらない状況では、利用できないという。

 固定電話にも影響が出た。NTT東日本によると、6日朝から道内の9町(厚真、むかわ、平取、日高、新冠、新ひだか、浦河、様似、えりも)の一部で、アナログの固定電話が約2万4千回線、光回線を使った「ひかり電話」が約1万回線、一時利用できなくなった。地震で回線が損傷したためで、午後4時半までにおおむね復旧した。同社は6日から道内全域で公衆電話を無料で使えるようにしたほか、電話がつながりづらい場合に「171」にかけると固定電話や携帯電話などの番号に伝言を残せる「災害用伝言ダイヤル」の運用を始めた。

ATMも動かず

 停電で金融機関は多くの店舗で営業ができなくなり、ATM(現金自動出入機)も稼働できなくなるケースが続出した。

 道内最大手の北洋銀行(札幌市)では6日に営業できたのが道内169店舗のうち47店で、一部店舗は自家発電設備で対応した。北海道銀行(同)も道内140店のうち営業できたのは27店だけだった。2行の店舗外ATMの多くは停電で稼働できなくなった。

 自家発電で何とか営業した店も、今後は「重油の補給体制がどれくらい整うかにかかっている」(北洋銀広報)という。

 メガバンクでは、みずほ銀行が道内に5支店、三菱UFJ銀行と三井住友銀行が札幌に1支店を持ち、自家発電で営業した。ただ、道内の複数のATMが停電で停止した。

 日本銀行札幌支店によると、道内に本店がある金融機関は、いずれも本部に自家発電設備があり、金融システムを揺るがすような懸念はないという。日銀の支店も自家発電設備で営業し、現金の供給などは通常通り行えているという。

 また、札幌証券取引所(札幌市)は6日、全銘柄の売買を終日停止した。停電によりシステムが動かないため。7日朝に再開できるかどうかを判断するという。東京証券取引所によると、札幌証券取引所に単独で上場している会社数は15社ある。

 北海道の地震が景気に与える影響について、SMBC日興証券の宮前耕也氏は「農業への懸念が大きい。道路の寸断などで物流が滞れば、野菜の高騰など一般の消費者にも打撃が及ぶ。電力不足は復旧に約1週間かかるとの指摘もあり、経済活動への悪影響は無視できない。最近は国内で災害が続き、(好調だった)訪日外国人の足が遠のく心配もある」と話す。