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【アピタル+】患者を生きる(1型糖尿病とスポーツ)

 インスリンが出なくなり、糖の吸収ができなくなる1型糖尿病。連載では、病気と向き合いながらJリーグで活躍した杉山新さん(38)を紹介しました。自身も1型糖尿病の、南昌江内科クリニック(福岡市南区)の南昌江さん(55)は「1型でもスポーツを諦めないで。どのぐらいの運動と食事で血糖が上下するかを知って管理すれば大丈夫」と話します。どんな注意点があるか聞きました。

血糖の変化、練習時に把握を

――スポーツを始めたい、または続けたい人はどうすればいいですか。

 インスリン量や血糖値の上下は個人差が大きいので、まずは主治医に相談します。スポーツの種類や強度にもよりますが、どんな練習をしたら、どのぐらい血糖値が下がるのか測ってみましょう。それに合わせて、ベース(基礎)として打つインスリンと、食事の前に追加して打つインスリンの量を調節します。

 血糖はその日の体調によっても変わるので、自分の体についてしっかり知ることが大事です。また、緊張すると出るアドレナリンは血糖値を上げるので、大会の大きさによっても変わってくるでしょう。慣れてくると、体感で血糖がつかめる人もいます。

――血糖値はどのぐらいで管理するのがいいのですか。

 長距離走なら、1デシリットルあたり200ミリグラムほどで走り始め、同150前後を維持するのが理想です。

 1型の患者さんは血糖の変動が大きいので、特に気を付けなければならないのは血糖が同70ミリグラム以下となる「低血糖」です。だるさ、冷や汗、頭痛といった症状が出て、意識を失う危険もあります。

 多くの患者さんは、低血糖の前に「何かおかしいな」と気づくと思います。その場合は「補食(ほしょく)」といって、血糖が下がり始めた頃に糖質を食べて補います。低血糖の症状が出始めていたら、ビスケットなどでは間に合わないので、すぐにスポーツドリンクやブドウ糖などの糖分を口にします。

 運動時は消化管の活動が下がっているので、補食は胃に負担のないものを用意しましょう。また、突然激しいスポーツをするのではなく、練習を積んで、自分の傾向や低血糖になりやすい時間帯を知っておくことも大切です。

 

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糖分の取りすぎにも注意

――低血糖のほかに注意することは。

 暑い時期のスポーツは、熱中症に注意が必要ですが、スポーツドリンクのとりすぎにも気をつけたいです。

 実はスポーツドリンクを飲むとどんどん血糖値が上がります。インスリンを打つ量を減らしすぎて、糖分ばかりを体に入れてしまうと、「糖尿病ケトアシドーシス」という危険な急性合併症を起こすこともあります。

 水分と血糖のバランスが大事なので、水とスポーツドリンクを交互にとるといった対策で予防しましょう。

――避けた方がいいスポーツはありますか。

 特にありません。普段インスリンを補給するポンプを装着していても、1時間ほどの水泳ならポンプを外せば大丈夫です。マラソンといった有酸素運動の方が、無酸素運動よりも血糖値が下がりやすいので、手軽に摂取できる小型のスポーツゼリーなどを健康な人よりも多く持っておきます。低血糖などが起きた時に危険があるため、登山は誰かと行くようにしましょう。

「限界はない」フルマラソンに挑戦

――南さんもマラソンをしていると伺いました。

 14歳の時に1型糖尿病を発症しました。病気になっても「限界はないんだ」と訴えたくて、何かに挑戦してみようと39歳からフルマラソンを走っています。

 人によって体質や運動の強度などで個人差がありますが、私の場合はインスリンポンプをつけて、血糖の傾向を見ながらインスリン量を調整しつつ走ります。42キロの間におよそ3本のスポーツゼリーをとったり、スポーツドリンクを飲んだり、補給所で糖質をとったりしています。その日の体調にもよりますが、大まかに150~200グラムほどの糖質をとっているでしょうか。

 人によっては、走る前におにぎり3~4個を食べて、マラソン中はアメだけで済ますというケースもあるので、その人が安全に走りきれる自分なりの方法を見つければいいと思います。

――皮膚の中のグルコース値を測り、そこから算出した血糖値の傾向を知る機器も発売されましたね。

 インスリン補給にペン型注射器を使っている人でも、この機器をつけてスポーツをすれば、自分の大体の傾向が分かるので、インスリン量や補食の調整がしやすくなりました。ただ参考値なので、「体調がおかしい」と思ったら低血糖を疑ったり、血糖を実際に測ったりすることは大切です。

普段の食事も気づかって

――食事の面で気をつけることはありますか。

 糖質をカットしすぎるのも良くありません。全体の食事の5~6割は糖質をとりましょう。

 運動は1型糖尿病患者の心身にとってプラスが多いと感じます。加齢に伴い心身の活力が弱る「フレイル」の予防が叫ばれるようになりましたが、運動は筋肉や骨を強くします。血糖値も安定します。何より、楽しく体を動かすことが精神的なリフレッシュになると思います。私自身も、健康管理と楽しみの一つです。私は1型糖尿病になって40年ほどですが、元気に過ごせています。病気だからといって諦めないでほしいです。

      ◇

 糖尿病の患者や家族、医療従事者らでマラソンを楽しむTEAM DIABETES JAPAN(日本糖尿病協会チーム)は、10月のタートルマラソン(東京)や、12月のホノルルマラソン(ハワイ)などに参加している。

 同協会にチャリティーTシャツなどを購入できるページ(https://www.nittokyo.or.jp/modules/patient/index.php?content_id=7別ウインドウで開きます)がある。南さんは10月、自身の体験を著した本を医歯薬出版から出す。

 

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<アピタル:患者を生きる・スポーツ>

http://www.asahi.com/apital/special/ikiru/水野梓