[PR]

 震度7の揺れに見舞われた北海道厚真(あつま)町。果実農園などの緑が広がっていた光景は一変した。吉野地区では裏山が崩れて、集落の家々が土砂にのみ込まれた。夫(68)と義母(91)の3人で暮らす脇田友子さん(56)は、突然の衝撃で目を覚ました。

 「爆弾が落ちたみたいに、ボンと体が突き上げられたかと思うと、ゴーという音と共に、土砂が家に流れ込んできた。何があったのか全く分からなかった」

 発生は午前3時過ぎ。3人はそれぞれ別の部屋に寝ていた。辺りがまだ真っ暗な中、右足ががれきに埋まった。余震の度にどんどん体が埋まっていく。携帯電話が鳴っているのが聞こえるが、手は届かない。「これ以上、体が沈むとやばい」。周囲の物をつかみながら、死にものぐるいで土砂から抜け出した。

 すると、暗闇の向こうから「大丈夫か。そのままいれよ」という夫の声が聞こえた。「普段はあんまり言葉の多くない人」。心強かった。義母が体を動かす音も聞こえた。

 空が明るくなり、崩れた柱や壁の隙間から、夫に引っ張り出してもらった。3人とも無事だった。病院で右ひじと右ふくらはぎの切り傷を手当てしてもらい、避難所に来た。「まだ見つかっていない知り合いがたくさんいる。無事でいてくれることを願っています」と話した。

 自宅2階の寝室で、山側に足を向けて寝ていた近くの会社員中田匠さん(32)は、家具が揺れる音で目を覚ました。家が傾いていく。ベッドに必死にしがみついた。揺れがおさまってから、2階の別室で眠っていた兄や姉と「無事だ」「大丈夫だ」と伝えあった。

 ベッドに飛んできた靴をはき、窓枠を蹴って外した。2階のはずなのに、地面はすぐそばにせまっていた。両親の寝室がある1階は見えなくなっていた。

 自宅から出てきたきょうだい3人で声を上げた。「お父さん」「お母さん」「返事して」「返事ができなくても、物をたたけないか」。返事はなかった。

 普段何もないところに土の壁があった。近所の家々にも、無事かどうか、声をかけてまわった。明るくなってから、麦畑に着陸した自衛隊のヘリコプターに救助された。まだ、両親の安否は分かっていない。

 人口4700人弱の小さな町を襲った強大な揺れ。被害が最も大きかった吉野地区を中心に、町内では20棟以上の住宅が倒壊した。町によると6日夜時点で、5人が死亡し、3人が心肺停止、安否不明者は31人に上る。土砂に埋まった現場では、余震の中、警察や自衛隊などが土砂を掘り出したり、電気ノコギリを使ったりして不明者を捜し続けた。

 馬場雅樹さん(68)は、吉野地区に一人で暮らすおじの家に駆けつけ、その様子を見守った。夜が明けて、地区の裏山があちこちで崩れ、家が押し流されているのが目に入った。「信じられない。雨はともかく、まさか地震で山が崩れるとは思わなかった。こんな簡単に崩れるなんて」と話した。