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 地震と停電の二つのショックが北海道の政治経済の中心、人口200万人を擁する札幌市を直撃した。液状化現象で住宅が傾き、道路はいたるところで波を打った。地下鉄や鉄道はストップし、コンビニエンスストアやスーパーは薄暗い中で営業を続けたが、次第に品物不足になるなど、市民生活に大きな影響が出ている。

 札幌市清田区の住宅街では、液状化現象が発生。道路に大きな亀裂が入り、複数の家屋が傾いた。道路が大きく盛り上がったり、陥没したりしたほか、マンホールが路面から飛び出したところもあった。

 近くに住む男性(37)は「午前4時20分ごろ、コンビニへ買い出しに出ようとしたら、すでにこの状態だった。こんなことは初めてで驚いている」と話した。

 付近は断水したままだ。生後6カ月の乳児を抱いた住人の女性(23)は「水が出ない。ミルクやおむつが足りなくなるのではないかと心配です」。

 地震から10時間以上が経過した6日午後1時40分ごろ、同区の駐車場では、救急隊員が液状化で噴き出した泥に埋まっていた一ノ瀬康孝さん(60)を救助していた。一ノ瀬さんは正午過ぎに勤務先の駐車場に来たところ、別の男女が泥にはまっているのを発見。助けようとして自らも泥にはまったという。「泥がどんどん重くなり、動けなくなった」。救助活動は約3時間に及んだ。

 一方、停電の影響も広がっている。札幌市内の信号機は一部をのぞき停止したまま。交差点では、警察官が中央に立ち、笛を吹きながら交通整理した。市内の路線バスも、信号機の回復まで運行を取りやめた。

 医療機関でも、停電で患者に対応できなくなる事態が相次いだ。非常電源を持つ市立札幌病院には未明から、停電した病院から患者の受け入れ要請が続き、正午までに、人工呼吸器を使う入院患者や、人工透析が必要な人を5人ほど受け入れたという。

 交通機関も混乱した。JR北海道は全線がストップ。JR札幌駅では、午後2時半過ぎ、列車の運行再開を待つ人々が、薄暗く蒸し暑い構内にあふれた。改札口周辺には、シートを床に敷いて地べたに座り、スマートフォンで情報収集する人々が目立った。

 早朝から列車の再開を待っているという北海道帯広市から出張で来た会社員男性(47)は、気がかりなのがお金だ、という。ふだんはクレジットカードなどを使っていて現金をほとんど持ち歩いていなかった。「ATM(現金自動出入機)が使えないのが致命的だ。電気がないとこんなにも不便になると、身をもって感じた」と話した。

 同じころ、駅前のタクシー乗り場には約200メートルの列ができた。先頭にいた札幌市白石区のアルバイト男性(38)は、1時間以上、タクシーを待っているといい、「JRも地下鉄もバスも走っていないので、どこにも行けない。早く家に帰りたい」と疲れ切った表情をみせた。

 スーパーやコンビニでは、食料や水、生活必需品を買い求める市民が長い列をつくった。札幌市中央区の狸小路商店街「ドン・キホーテ狸小路店」前には、食料品や乾電池などを求める市民が殺到。近くに住む小学3年生の馬渕日向子さん(8)は学校が休校になり、母と2人で3時間並んで乾電池や携帯の充電器を買った。「足が疲れた。うちに帰って休みます」と話した。

 札幌市東区の美容師小林由紀子さん(50)は、朝からコンビニやガソリンスタンドなど10店舗ほど回った。ガソリンスタンドを3軒回ってようやく2千円分だけ給油できた。「4日の台風21号の影響で停電になって、復旧したと思ったらまた停電になった」と不安そうだ。

 一方、ゼミ合宿で首都圏から5日に札幌にやってきた千葉県の大学生池田和輝さん(21)は午後2時ごろ、ゼミ仲間と手分けして食料を探していた。「朝はコンビニも開いていたのですが、今はどこも閉まってしまって」。午前中から3時間近く歩き回っても、食べ物は手に入っていない。「とりあえず、仲間と合流してまた探します」と途方に暮れていた。

外国人観光客ら対象に臨時避難所

 札幌市内のホテルを6日にチェックアウトし、行く先がなくなった外国人観光客らを対象に、札幌市経済観光局はオープン前のさっぽろ創世スクエア(札幌市中央区)の1、2階部分を開放し、臨時の避難所を作った。約540人が身を寄せ合い、携帯電話の充電をしたり、テレビに見入ったりした。

 午後4時ごろから、椅子を並べたり充電できる場所を設置したりした。スペースはすぐに外国人観光客であふれかえった。水を配りはじめ、夜には毛布を配布する予定で、軽食も可能な限り集めて配りたいという。

 家族とともに旅行で札幌に滞在して3日目という韓国人観光客の女性(36)は「ホテルがなくて困っていた。携帯電話の充電もできるし、このスペースはありがたい」と話した。

 道によると、2017年度に北海道を訪れた外国人観光客は279万人。

地震に関連する動きを追った。

●3:08 胆振地方中東部を震源とする地震発生

●3:09 首相官邸の危機管理センターに官邸対策室を設置。北海道庁も災害対策本部を設置

●3:25 北海道内全域が停電

●5:10 気象庁が記者会見で「1996年の震度階級改定以降、北海道で震度6強は初めて」と発表

●5:49 安倍晋三首相が官邸に到着。「人命第一で、政府一丸となって災害応急対応にあたる」と発言

●6:00 北海道電力が会見し、道内全域の295万戸で停電したと発表。北海道知事は災害派遣を要請。自衛隊が順次災害派遣を開始

●6:39 菅義偉官房長官が臨時会見。「厚真町で6件以上の家屋倒壊、土砂崩れの発生4件確認」

●7:30過ぎ 首相官邸で関係閣僚会議を開催

●10:30 気象庁が2回目の会見。「1週間程度、震度6強程度の地震が起きる恐れがある」と発表

●11:30 北海道庁が、地震による死者が2人確認されたと発表

●12:00 世耕弘成経産相が電気供給について「北海道全域が完全に復旧するまでには少なくとも1週間以上かかる見通し」と発表

●13:00 北海道庁が道内に滞在する外国人向けの電話相談窓口を開設したと発表

●13:35 砂川発電所が再稼働

●15:00 北海道庁が、地震による死者が計4人確認されたと発表

●15:30 気象庁が厚真町で震度7を観測していたと発表

●16:00 JR北海道が北海道新幹線の6日の運転を終日見合わせることを発表

●17:30 気象庁が「平成30年北海道胆振東部地震」と名付けたと発表

●18:00 北海道電力が32万9千戸で停電が解消したと発表

●18:00過ぎ 安倍晋三首相が、道内で9人の死亡が確認されたと発表