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 独立リーグ出身で初めてFA権を得た7月末。ヤクルトの三輪正義(みわまさよし)は「フリーエージェント」ならぬ「フリーアルバイト」と、仲間からいじられた。愛すべきムードメーカーだ。

 内外野を守れるサブは、犠打でボールの勢いを殺すさじ加減が一級品。「バントは技術はもちろん、気持ちが大事。技術を語れば短時間で済みませんよ」

 そんな職人肌の34歳はチームに競り合う力がないと生きない。球団最多の96敗を喫した昨季は出場16試合で安打なし。オフには「クビも頭をよぎった」というが、小川監督の再登板で運命が変わる。今季は上昇気流に乗った6月から1軍に呼ばれ、渋い輝きを放つ。

 細い糸をたぐるように、人生を変えてきた。山口・下関中央工高のあと、一度は硬式野球をやめて軟式野球部へ。だが、夢を捨てきれず、四国アイランドリーグ・香川から2007年秋のドラフト6巡目でプロ入り。当時はドラフト会議が11月と今より遅く、秋季キャンプ中の高田監督(当時)が視察に来たのが縁だ。「運が良かった」

 FA権取得は、身長168センチの体で、しぶとく生き抜いてきた証し。その姿勢は、小柄な体格でプレーする球児にも一つの指針となる。「ちっちゃいからと言ってできないことはない。できることを探すだけ」。元独立リーガーのパイオニア(先駆者)として残した足跡、プロ野球界を生き抜く誇りは小さくはない。(ヤクルト担当・笠井正基)