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経済気象台

 北海道胆振東部地震があるまで、多くの北海道民は電力の半分を一つの火力発電所に依存していたことなど知らずに暮らしていた。全道に及んだ停電は酪農にも影響を与え、日ごろは当たり前になっている大切な事が見えてきた。

 酪農家は毎日2回搾乳をする。生乳はバルククーラーと呼ばれる冷蔵施設で冷やされ、2日に1回ミルクローリーで乳製品工場に出荷される。その間、全ての工程で電力が使われる。今回の停電によって乳業メーカーの工場は操業をストップした。

 一方で、乳牛たちは毎日搾乳をしないと乳房炎という病気になるため、搾乳は停止できない。酪農家によっては、自家発電施設を整備しているところもあるが、そうではない酪農家はどうしたのか。酪農家が組織している農協の職員たちが、移動式の発電機を持って酪農家を巡回し、一軒一軒搾乳をして回ったのである。地震の当日朝から始まった巡回しての搾乳は夜中まで続いた。

 農協はいま色々と批判をされ、農家に安い資材を提供するようにもっと努力をせよと、政府からも注文が付いている。だが、こうした非常事態になってみると、農協は単に経済的利益だけを目的とした組織ではなく、地域の助け合いが元となった組織なのだと、改めて感じる。

 搾乳された生乳は、残念ながら工場が停止しているため出荷することはできず、廃棄された。北海道の平均規模、搾乳牛100頭で計算すると1日28万円の損失となった。

 生き物である乳牛と向き合いながら、毎日休むことなく続く営みである酪農。その酪農は個別経営体だけではなく、普段は目に見えないつながりによって支えられているのである。(着)