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 台風21号による大規模停電は、近畿6府県を中心に延べ約219万戸に及んだ。約3万戸は今も復旧のめどが立っていない。強烈な風で飛んできた屋根や倒木が電柱や電線に当たり機能を失う現象が、広い範囲で起きた。

 「台風は大丈夫でしたか」。大阪市西淀川区の市立姫島小学校では6日夜に停電が解消して電話が通じ、7日朝から教員らが児童宅に安否確認をした。7日まで4日連続で休校し、高橋正実校長(59)は「関西電力に連絡が取れずいつ復旧するかわからなかった」。保護者へは別の小学校の校長室からメールで連絡した。「給食の冷凍庫の食料は廃棄した。学校近くの信号機が停電していたので子どもの登下校が心配」と話した。

 大阪府泉南市の大阪晴愛(せいあい)病院は6日未明まで停電が続いた。入院患者は約60人。うち4人は人工呼吸器をつけていたが呼吸器のバッテリーでしのいだ。深美修事務長(67)は「転院先を探したが、どの病院も手いっぱいで見つからなかった」。非常用電源はあるが院内は薄暗く、病室にランタンを置いた。5日は休診にしたが50人ほどの患者が訪れて薬を渡すなどした。中国電力の電源車が来て停電は解消されたが、「停電が怖いので節電を続けている」。

 関西電力によると、和歌山県や京都府の山間部など約3万戸は、現場に向かう道路に倒木や倒壊した電柱があって作業員が立ち入れない。1995年の阪神・淡路大震災では1週間で停電が解消されたが、担当者は「震災は神戸市中心部などに被害が集中した。今回は被害が広範囲に及んだことも長期化に影響した」と説明する。

 ただ、発電所や鉄塔に影響はなく、主な被害は電柱や電線、変圧器。関電はほかの電力会社に40台の電源車の派遣を依頼したほか、住宅1戸の電力を賄えるポータブル発電機550台を用意し、自治体を通じて人工透析患者らに貸し出した。

電柱被害は800本超

 台風の被害を受けた電柱は、近畿6府県で800本を超えた。電柱は最大で風速40メートルの猛烈な風にも耐えられる設計だったが、今回は飛来物が当たって想定を超える力が加わったという。

 近畿を通過した4日の最大風速は、和歌山市で39・7メートル(最大瞬間風速57・4メートル)、大阪市で27・3メートル(同47・4メートル)、大阪府南部の熊取町で26・8メートル(同51・2メートル)。関電の担当者は「強風で飛ばされたトタン屋根や倒れた木が電柱や電線にひっかかり、想定の風速よりもさらに大きな力が加わった」とみる。

 対策としては、電柱の直径を太くしたり、電線を地中化したりする方法が考えられるが、いずれも工事のコストや地震のリスクなどの課題があるという。担当者は「飛来物への対応は自社だけでは限界がある」と話した。

システムダウンで苦情殺到

 大規模停電の影響で、停電範囲を送配電の状況から自動的に把握する関電のシステムにも障害が発生した。

 2004年8月の台風16号では関電管内の56万戸が停電した経験から、同規模の停電情報は把握できるようにシステムを増強していた。だが今回の停電規模はこの約4倍。停電情報が集中し、システムの処理能力が追いつかなくなった。

 関電はこの停電情報システムを利用し、ホームページを通じて停電地域や復旧状況を利用者に提供していた。だが、4日午後から6日夜までシステムが停止し、関電や自治体に問い合わせの電話が殺到した。

 関電はオペレーターを100人増の500人態勢にしたが、電話がつながりにくい状況が続いた。ただ、つながっても、システム停止で十分な情報提供ができなかった。

 大阪府岸和田市の市役所本庁舎は4日に一時停電して守衛室の電話しか使えなくなったが、「関電に電話がつながらない」などの電話が鳴りっぱなしだった。

 大阪府幹部は7日、府庁に関電幹部を呼び、「市町村にものすごいたくさんの苦情が入り、災害対応に支障があった」と苦言を呈した。関電の担当者は同日の会見で、「対応は十分ではなかった」と謝罪し、「反省して知恵を出しながら対策を考えたい」と話した。(五十嵐聖士郎、島脇健史)