拡大する写真・図版 写真集に収められている元船員の写真=岡村啓佐さん提供

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 マーシャル諸島・ビキニ環礁などの周辺海域で米国の水爆実験に遭遇した高知県の元船員らの実情を世界に知ってもらおうと、支援者が写真集や教材の出版を予定している。いずれも英語などの外国語に翻訳する予定だ。

 高知市の平和資料館「草の家」副館長の岡村啓佐さん(67)は、写真集を12月に出版する予定だ。タイトルは「NO NUKES(核はいらない)」。高知、静岡、神奈川、東京の4都県在住の元船員や遺族の自宅に足を運び、約50人の写真を撮った。

 収録は約70点。しわくちゃになった元船員。元船員の遺影を持った遺族は、モノクロの写真の中でまっすぐにこちらを見つめる。写真とともに、元船員たちの体験談も載せる。

 元船員が所属したマグロ漁船はビキニ環礁周辺で実験が行われた1954年当時、周辺海域を航行していたとされる。だが、国などの被災調査は同年内に打ち切られ、元船員は被曝(ひばく)の実情を知ることはできなかった。現在、「労災」にあたる船員保険の申請や、損害賠償を求めて国を訴えている。岡村さんは94年から元船員たちの写真を撮り続け、2016年からは裁判などの支援をしてきた。

 昨年、岡村さんが編集委員長を務め、元船員たちの証言集「ビキニ核被災ノート」を出版した。だが、岡村さんは消化不良だった。ノートは日本語のみで書かれ、「実験したアメリカの国民にビキニ被曝について知ってもらいたい」と思った。証言集に収録できなかった遺族の写真を入れることも決めた。

 写真集の自費出版を決め、高知大の教員や学生に協力してもらい、文書を日本語と英語で書いた。12月の出版を目指している。写真集は県内の小中学校に寄贈するという。

 元船員を支援してきた太平洋核被災支援センター(宿毛市)はこれまで収集した元船員や遺族の証言をまとめたDVDと補助教材の作製に取りかかっている。センターは、国賠訴訟や船員保険の申請を支援してきた。

 今年3月、ノーベル平和賞を受賞した国際NGO「核兵器廃絶国際キャンペーン」(ICAN)の国際運営委員・川崎哲さんが講演で高知県に訪れた。川崎さんは「ビキニ水爆で被曝した可能性のある人は、マーシャル諸島など世界中にいる。世界的な問題だ」と話した。

 講演を聴いていたセンターの山下正寿事務局長は「世界の教育現場でビキニ事件について知ってもらえる教材をつくろう」と思いついた。DVDは英語、仏語、ロシア語などに翻訳する。国内の学校や図書館に配布するほか、核保有国に配布する予定だ。

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 岡村さんとセンターは、朝日新聞のクラウドファンディングサイト「A―port」(https://a-port.asahi.com/別ウインドウで開きます)で資金を募っている。岡村さんは今月20日まで一口3千円。センターは11月30日まで一口2千円。

 

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http://www.asahi.com/apital/medicalnews/focus/(森岡みづほ)