惜別 ジョエル・ロブションさん フランス料理シェフ
何かを始めるたび料理の世界に衝撃が広がる。シェフに創造性が求められ、美食がグローバル化していく時代を牽引(けんいん)し、後に続く多くの人材を生んだ。
最初の衝撃は1981年、36歳でパリ16区に開いた「ジャマン」。古典を下敷きに、盛り付けも新しく精緻(せいち)な料理を繰り出し、わずか3年でミシュラン三つ星の名店にした。
鮮度を重視してその日使う分の材料しか仕入れない。口に入れた時、誰でも同じ味わいになるよう野菜の切り方にミリ単位の決まりがある。「完璧な料理のために、働く側は生き地獄でした」と修業先として2年半働いた河野透さん(60)は言う。
「できた皿を前に『誰が作った』と問われて緊張が走る。やり直しの指示か、『セ・トレ・ボン』とほめるか。上をめざす気持ちを持たせる技だ、と自分がシェフになって気づいた」
絶頂期の51歳での引退宣言…