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 ギャンブル依存症からの脱却を支援する動きが、静岡県内で広まっている。背景には、カジノを含む統合型リゾート(IR)の推進に伴い、国が依存症対策に力を入れ始めたことがある。静岡市では7月から、指定市で初めてギャンブル依存に特化した集団での回復プログラムを開始。民間グループなどの活動も活発になってきている。

静岡市が集団回復プログラムを開始

 「資格の勉強は時間も使えて身にもなる。一石二鳥ですね」「ギャンブル欲が出たら、アロマの香りで心を落ち着かせてみては?」

 8月下旬、静岡市こころの健康センターで、ギャンブル依存症の回復プログラム「リカバリー・チャンネル」が開かれた。プログラムはグループ形式で、週1回、無料で開催。進行役の臨床心理士や精神保健福祉士と共に、ギャンブルをする原因や対策などを繰り返し話し合うのが特徴だ。

 この日のテーマは「ギャンブルの替わりに何しよう?」。市内に住む男女2人が参加し、それぞれの生活パターンや趣味から解決策を互いに考え合った。

 看護師の女性(47)は4年前からパチンコにはまりだした。初めは夫が出勤中の暇潰しのつもりだった。だが、勝ったり負けたりを繰り返すうちに「『次は勝つんじゃないか』とやめられなくなった」。気がつけば借金は500万円にまでふくれあがっていた。母の形見のネックレスを返済に充てるなどしたが返しきれず、夫に借金を打ち明けて受講を決めた。

 女性がパチンコに行きたくなるのは夫が出勤中の時間。行動パターンを書き出すと、夜勤明けから午前11時までの空いた時間が課題だと分かった。帰宅しても「特にすることが無い」という女性に、臨床心理士が「夜勤明けの朝ご飯を優雅に過ごしてみては?」と提案。「職場の近くにおしゃれなカフェがあるし、楽しく過ごせるかも」と女性は実践することを決めた。

 会社員の男性(28)は今年4月からプログラムに参加。同じ悩みを抱える人と話すことで、「依存症は自分一人じゃないと思えて、前向きになれた」と話す。講座では趣味のサッカーを生かす方法を考え、「サッカー指導者の勉強を始めてみる」と決めた。

 市がギャンブル依存症の個別の回復プログラムを始めたのは昨年10月。2016年のIR推進法などの成立を受け、国が依存症対策を強化する方針を示したのがきっかけだ。認知行動療法を基に独自に作ったテキストを使い、7月からは集団でのプログラムも開始。現在は個別と集団で計7回の講座を行っている。

 昨年10月以降の受講者は8月20日時点で35人。修了者11人の9人が、ギャンブルに費やす額が直近のピーク時の20%以下になるなど効果も出てきた。センターの松本晃明所長は「依存症は特効薬が無く、一人で解決することは難しい。勇気を出して相談してほしい」と話す。

悩み、話し合える場も充実

 民間の自助グループなどによる活動も活発化している。

 全国各地に拠点を置き、ギャンブル依存症の人を支援する「ギャンブラーズ・アノニマス」(GA)。県内では静岡、沼津、磐田、浜松の4会場がある。週1回、2時間ほどの活動の基本は「言いっ放し、聞きっ放し」。依存症当事者や家族らが互いの悩みや日々の出来事を話すことで、ギャンブルのきっかけとなるストレスを軽減する。今年で10年目を迎え、これまで150人以上が参加した。

 同じく全国に拠点を置く「ギャマノン」は依存症の人の家族や知人が対象。毎週土曜の午前中に静岡市内で活動し、GAと同様に互いの不安や悩みなどを話し合う。

 国立病院機構久里浜医療センターが昨年、1万人を対象に行った調査では、生涯で一度でも依存症だった疑いがあるのは成人(20~74歳)の3・6%。16年調査より1%近く高く、約320万人と推計される。

 依存症問題に詳しい静岡大の鳥畑与一教授(国際金融論)は、20年にも最大3カ所でIRが開業するとしたうえで「静岡は空港もあって東西に動きやすく、依存症の人が増える可能性が高い」と指摘。回復プログラムについては、「依存症は薬で対処出来るものではなく、一生の問題。誰かが脱落しないよう、集団の利を生かしてレクリエーションなどでつながりを作ることが大事だ」と話す。

 

<アピタル:ニュース・フォーカス・その他>

http://www.asahi.com/apital/medicalnews/focus/(増山祐史)