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 リーマン・ショックから10年の節目を前に、12日、金融危機の収拾に当たった米政権高官が一堂に会した。市場がパニックに陥るなか、国民の理解を得て金融システムを支えることの難しさを振り返った。

 米ブルッキングス研究所で登壇したのはヘンリー・ポールソン氏、ティモシー・ガイトナー氏、ベン・バーナンキ氏。2008年9月15日、米金融大手リーマン・ブラザーズの経営破綻(はたん)時にそれぞれ財務長官、ニューヨーク連邦準備銀行総裁、米連邦準備制度理事会(FRB)議長を務め、金融機関の監督に当たっていた。

 リスクを冒した金融機関を公的資金で救済することには米世論の反発が強く、最大7千億ドルの公的資金を柱とした金融安定化法も米議会で一度は否決された。リーマンを救済しなかった判断は批判も浴びたが、ポールソン氏は、リーマンを破綻させたことで「政治システムに衝撃を与え、(公的資金を使った)『TARP(不良資産救済プログラム)』の導入にもつながった」との認識を示した。

 リーマン・ショックは住宅バブルの崩壊に端を発したが、バーナンキ氏は、貸したお金が返ってこなくなるのではないかとの不安が投資家に広がる「信用危機」の側面が強かったと強調。「電子化された高度な金融制度のもと、かつて街で起きたような取り付けとは違うとはいえ、ある面では古典的な銀行パニックが起きた」と述べた。危機後、迅速にドル資金を市場に大量供給した判断の背景として「日本やスウェーデンなどの過去の金融危機に学んだ」ことにも触れた。

 リーマン・ショックが米欧などのポピュリズムの台頭につながったとの見方も根強い。ただ、バーナンキ氏は「実質賃金が長く伸びず、格差の拡大も続いていた。金融危機はこうした問題を悪化させたが、いまの政治を招いた主要な原因ではない」と述べた。

 ポールソン氏を継いでオバマ政権下で財務長官に就いたガイトナー氏は「今後もあらゆる危機のあらゆる要因に注意しつつ、人知でそれを察知できるかについては謙虚で懐疑的であるべきだ」と警鐘を鳴らした。(ワシントン=青山直篤)