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 涙が出るほど便が出ない――。そんな悩みを秘めている方はいませんか。気づいたら5日も便が出ていなかったり、おなかが張って苦しかったり、出口に詰まっている感じがしたり。困った時、まず頼りたくなるのが市販薬ですが、使い方を間違えると効果がないだけでなく、体に悪影響を及ぼす場合もあります。市販の便秘薬の特徴や選び方などを、医薬品の情報に詳しい薬剤師で、一般社団法人日本薬業研修センター・医薬研究所長の堀美智子さんに聞きました。

まずは便秘のタイプを知ろう

 ドラッグストアに行くと、棚にずらりと陳列されている便秘薬。その数に圧倒されてしまうが、「薬は、自分がどのタイプの便秘か考えながら選ぶ必要があります」と堀さんは言う。

 一口に便秘と言っても、原因はさまざまだ。背景に病気などがない、いわゆる一般的な便秘には、次の4タイプがある。

 

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 まず、そもそも食事の量が少ないために便の量が少なくなるのが「食事性便秘」。医学的な分類ではないが、過度のダイエットなどで起こりやすい。

 次に、何度も便意をがまんしたり、便秘薬を使いすぎて便意を感じなくなったりしておこる便秘は「直腸性(習慣性)便秘」という。一過性の便秘に多いタイプだ。出口に近い直腸の部分に便がとどまってしまい、放っておくと便はどんどん硬くなる。

 これに対して、お年寄りなどに多いのが「弛緩(しかん)性便秘」。寝たきりや運動不足などが原因で、腸の動きが鈍くなっておこる。

 また、ストレスなどで自律神経のバランスが崩れて、腸がうまく動かなくなる「痙攣(けいれん)性便秘」は、コロコロとしたウサギのフンのような便になることがある。

 堀さんは「便秘は生活習慣病なので、予防にはまず、きちんと食事や睡眠をとって腸と脳のリズムを整えることが大切です。便のかさを増す穀類や芋類などの不溶性の食物繊維だけでなく、果物などに含まれる、便をやわらかくする水溶性の食物繊維もとるようにしましょう」と話す。

 排便は、「毎日」「毎朝」なくても、本人に不快感がなければあまり気にする必要はない。ただ、3日以上出ないとか、排便の時に不快感があるといった場合に、薬の使用も考える。

薬の働き方は4種類、でも市販薬のほとんどは「大腸刺激性」

 では、市販の便秘薬にはどんな種類があるのだろう。薬の作用に着目すると、次の4種類に整理できる。

 ①大腸刺激性下剤。その名の通り大腸を刺激して蠕動(ぜんどう)運動を促す薬だ。②酸化マグネシウムに代表される塩類下剤。腸内でほとんど吸収されないため腸内の浸透圧が高まり、腸管の中に水分を引き込むことで、腸の内容量を増やしたり、便を軟らかくしたりする。③浸潤性下剤。硬い便の表面にくっついて、便の中に水分をしみ込ませやすくする。そして④膨潤性(膨張性)下剤。成分そのものが腸の中で水分を含んで膨らみ、便の量を増やして腸の動きを促す。

 

 市販薬は、これらの成分がブレンドされているものが多い。ただ、実は、よく見るとほとんどの薬に含まれているのが、①の大腸刺激性の成分だ。①をベースに、③や④の成分が混ぜてある、とイメージすると分かりやすい。「大腸刺激性の薬は他の薬に比べて効果がすぐに出やすいので、短期間の急激な便秘には、こちらを使うことが多いです」と堀さんは言う。ちなみに②は、医療機関で、慢性的な便秘を治療するときにまず選ばれる。

 大腸刺激性の代表的な成分には、センノシドやビサコジル、ピコスルファートナトリウムなどがある。パッケージに「植物性」「ナチュラル」「生薬由来」などと書いてあると体にやさしそうだが、センナやアロエ、ダイオウなども大腸刺激性の成分だ。

選ぶときの注意点、腎臓の悪い人や高齢者は…

 薬を選ぶ際には、便秘のタイプや持病などの背景を考慮する必要がある。選択を間違えると、場合によっては、便秘を解消するどころか悪影響を及ぼすこともあるという。

 まず、大腸刺激性下剤は、長期間の使用を避ける。繰り返し使うと耐性が起こって、薬を飲んでも効果が得にくくなってくる。すると、知らず知らずのうちに服薬量が増えて、一度に何十錠も飲んでしまうケースもあるという。

 反対に「刺激が少ない」「くせになりにくい」とうたわれる酸化マグネシウムは、腎機能が悪い人は使ってはいけない。また、「高齢者は腎機能が落ちていることが多いので、慎重に使ってください」と堀さんは言う。腎機能が悪い人がこの薬を飲むと、血液中のマグネシウム濃度が上がって意識を失ったり、死に至ったりする「高マグネシウム血症」に陥る危険がある。実際に死亡例もあり、2008年と2015年に厚生労働省が注意を呼びかけている。

 他にも、注意した方がいいケースがある。

 例えば、ダイエットをしていて食事の量が少ない人には、便のかさを増やす膨潤性下剤が選択肢になる。ただ、ものをうまく飲み込めないお年寄りがこの薬をのむと、のどにひっかかったまま膨らむ恐れもあるので要注意だ。

 また、ストレスで自律神経のバランスが崩れて、腸のリズムが乱れる痙攣性の便秘に陥っているときに大腸刺激性下剤を使うと、かえって逆効果になる恐れもあるという。「痙攣性の便秘で、便秘と下痢をくり返しているような人は、大腸刺激性の薬ではなく、整腸剤が入ったものをおおすすめします」と堀さんは言う。

「出口に詰まっている感じ」がする時は

 便秘の時に考慮する薬にはもうひとつ、座薬や浣腸(かんちょう)がある。便意はあるけれど、肛門(こうもん)の部分に便がひっかかっていてどうにも出ない……。トイレで2時間もいきんだり、自分の指で少し便をかきだしてみたり……。こんな症状で悩んでいる場合には、まず「詰まっているもの」を取り除くために、座薬や浣腸が選択肢になる。

 座薬は、炭酸ガスで腸を刺激して排便を促すものが一般的だ。浣腸は、グリセリンなどの液体を肛門から注入して、腸を刺激したり、便をやわらかくしたりして排便を促す。使うときは肛門や腸を傷つけないように注意し、頻繁に使うことは避ける。

 

注意事項多すぎ……結局、どうやって選べばいい?

 これほど注意事項があると、自分で薬を選ぶことに不安を覚える人もいるだろう。自分の便秘のタイプがどれかを、自分で判断するのはなかなか難しい。

 そんな時「まずは薬局で、薬剤師に相談してください」と堀さんはアドバイスする。食事や睡眠がとれているか、便の状態は硬いか軟らかいか、肛門の部分につかえている不快感があるか、などを伝えることで、より適した薬を選ぶことができるという。

 

 また、堀さんは「市販薬はあくまで、一時的に使うものです。少なくとも1カ月以上薬が手放せないような時は、専門の医療機関にかかりましょう」と話す。長く続く便秘の背景には、別の病気が隠れていることもある。また、医療機関では、市販薬とは違う薬も扱っている。特にここ数年、新薬が次々と公的医療保険の対象になっていて、高齢者などの治療の選択肢が広がってきている。

 もし、自分でうまく医療機関を探せない場合にも、薬剤師を活用して欲しいと堀さんはいう。できれば、かかりつけの薬剤師を持てると心強い。「薬局は情報機関でもあるので、どんどん質問してください。何かを調べてくださいとお願いした時に、調べてくれるところは信頼できるでしょう」。

 

<ほり・みちこ>

 薬剤師。医薬情報研究所(株)エス・アイ・シー取締役。一般社団法人日本薬業研修センター・医薬研究所長。一般社団法人日本女性薬局経営者の会会長。東京・八王子市で薬局を経営しながら、患者に対して適切な情報提供のできる薬剤師や登録販売者の育成を目指し、研修や教材作りに取り組む。共著に「Dr.林&Ph.堀の危ない症候を見分ける臨床判断」「同 Part2」(じほう)など。

<アピタル:医療と健康のホント>

http://www.asahi.com/apital/healthguide/honto/(鈴木彩子)

鈴木彩子

鈴木彩子(すずき・あやこ) 朝日新聞記者

2003年朝日新聞社入社。高松総局、静岡総局、東京本社科学医療部、名古屋本社報道センターなどをへて、2016年4月からアピタル編集部員。