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 盛岡市の保育施設で2015年、預かり保育中の1歳女児が食塩中毒で死亡した事件は14日、盛岡地裁で判決が言い渡される。業務上過失致死罪に問われた施設の元経営者は公判で、熱中症対策のため、健康を害する量の食塩をイオン飲料に加え、女児に与えたことを認めた。熱中症予防に塩分摂取が推奨されるなか、何に配慮すべきなのか。子どもの健康に詳しい岩手県立中央病院の三上仁・小児科長(58)に聞いた。

 ――暑さに対して子どもと大人は何が違いますか。

 大人と比べて0~15歳までの子どもは体温調節機能が未熟です。人は体温が上がると、皮膚表面の血管を膨張させて熱を発散、拡散させます。また、汗腺から汗を出し、乾く際の気化熱で体を冷まします。子どもはこの機能が未発達で、体温が上がってもすぐに汗をかくことができません。

 暑さの影響を受けるという意味では、体格差も関係があります。気温は地表150センチで測定されますが、地表50センチ地点の温度は測定より最大で5度高くなります。大人より頭が地表に近い分、子どもは暑さを感じやすいと言えます。

 ――熱中症対策として子どもも食塩を取るべきなのでしょうか。

 一般的には、ごはんやみそ汁など普通の食事をしていれば最低限の食塩は取れていると考えていいでしょう。乳児なら母乳やミルクで十分ですし、離乳食が始まった幼児でも野菜スープなど通常の離乳食で事足ります。乳幼児の食事は薄味が基本ですが、それでいいのです。

 健康体で激しい運動をしないのであれば1日に必要な食塩は体重1キロあたり0・12グラム。体重10キロの子どもなら、最低1・2グラムの食塩が必要になる計算です。

 一方、非常に気温が高かったり、激しい運動をしたりする場合、経口補水液の補給を勧めます。糖分の多い飲み物は塩分と水分の吸収が落ちてしまいますが、経口補水液は水分と塩分、糖分のバランスが優れています。

 ――市販の「塩あめ」なども効果的でしょうか。

 塩分を取りすぎる可能性があるので一度に大量に食べ過ぎない、水分も一緒に取るなどの注意が必要です。体内のナトリウム濃度が高くなると、のどが渇きます。そこで水を飲まない状態が続くと、まれに食塩中毒を起こし、意識障害や嘔吐(おうと)などの症状が出ます。

 水分だけ与えても、体液のバランスが崩れてしまうので注意してください。塩分と水分を同時に取ることが大切です。

 食塩の致死量は体重1キロあたり0・5~5グラムとされています。一度に塩分を取るのも危険なので気をつけてください。

 ――今夏のような猛暑に備えておくべきことは。

 暑さに順応することが大切です。熱中症は気温がまだ高くない梅雨にも、体が環境に順応できず発症します。本格的な夏を迎える前の朝夕などに、日頃から親子で外で遊んで暑さに慣れるといいでしょう。

 中高生が部活などで炎天のもとで運動するなら、運動量を徐々に上げて体を順応させることが有効です。猛暑日にはクーラーを使う、外出は控えるなど、大人の配慮も必要です。子どもは自分で体温調節するのが難しいことを、忘れないでください。

<アピタル:ニュース・フォーカス・その他>

http://www.asahi.com/apital/medicalnews/focus/(聞き手・御船紗子)