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 沖縄や憲法、天皇制、日米関係のあり方を問うドキュメンタリー映画「国家主義の誘惑」が、全国で上映されている。沖縄県知事選や自民党総裁選を控え、映画を制作した渡辺謙一さん(67)と、映画に出演した政治学者の白井聡さん(41)に聞いた。

 ――映画で「戦後日本は海兵隊としてのアメリカはないことにして、ディズニーランドとしてのアメリカだけを享受し消費する体制を作った」という白井さんのコメントが印象的です。

 白井 米国の両義性を本土の日本人が実感していたのはベトナム戦争までで、今は沖縄だけに押しつけている。沖縄は「構成的外部」。平和国家・日本の外にあるように見えて、実は戦後体制を成り立たせるのに不可欠。この平和国家は、米国の戦争のお手伝いを一生懸命やっている。この矛盾が押し込められている場所が沖縄だ。

 渡辺 映画でミュージシャンの喜納昌吉(きなしょうきち)さんが「沖縄の本土復帰は美しかったけれども、実際は憲法9条の恩恵も受けていない」と言う。なぜ今、辺野古が問題なのか。なぜ沖縄だけが中央政権に対して反旗を翻しているのかが問われている。

 白井 「海兵隊としてのアメリカ」に、本土側も直面せざるをえなくなってきた。最近、対日貿易赤字をめぐり、トランプ大統領が「真珠湾を忘れていないぞ」と安倍晋三首相に迫ったと報じられ、日本の外交当局は「米国の大統領が日本に不満を持つはずがない」と必死に打ち消しているようだが、第三者的に見れば滑稽の極みだ。

 ――近著「国体論 菊と星条旗」(集英社新書)で、「対米従属」の問題を掘り下げていますね。

 白井 戦前は天皇が日本国民を愛してくれたように、戦後は米国が日本を愛してくれるという幻想のもとに、天皇の上に米国が載った形で「国体」が再編された。沖縄の占領状態を長期間継続させることを天皇が米側にひそかに依頼したとされる1947年の「沖縄メッセージ」も重要な要素として含まれる。

 ――「戦後の国体」はいつまで続くのでしょうか。

 白井 1868年の明治維新から1945年の敗戦までが77年。それから2022年までが同じく77年。「国体」が形成され、いったんは相対的に安定し、そのあと崩壊して社会全体をぶちこわす。このプロセスが二度繰り返されるとすれば、その過程の終わりとして考えることができるのではないか。

 渡辺 日米関係だけで物事は考えられない。地政学的にロシアや中国とも関係してくる。米ロ中という軍事大国のすきまにある島国が日本。競り合うのではなく、生き延びるために個性を強める方が大事だろう。そもそも同盟は対等であるはずなのに日米は対等でなく、戦後も別の形で不平等が継続している。明治人は不平等条約解消になぜあれほどこだわったのか、歴史をさかのぼって考えてほしい。(聞き手 核と人類取材センター・田井中雅人)

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 映画は第七芸術劇場(06・6302・2073)などで上映中。

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 わたなべ・けんいち 1951年生まれ。映像作家、映画監督。「天皇と軍隊」など多数。

 しらい・さとし 1977年生まれ。京都精華大学専任講師。著書に「永続敗戦論 戦後日本の核心」など。