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 今回のテーマは麻疹です。「はしか」とも呼ばれる麻疹は、麻疹ウイルスの感染によって起こる急性熱性発疹性の感染症です。

 麻疹ウイルスは人のみに感染するウイルスで、人から人へと感染していきます。このウイルスは空中を浮遊し、マスクを装着しても感染を防ぐことは困難です。感染力は極めて強く、麻疹ウイルスに感染すると、90%以上が発病します。

 年齢では1歳にピークがあり、約半数が2歳以下です。学校保健安全法施行規則では、麻疹に罹患(りかん)した場合は「解熱後3日間を経過するまで出席停止」とされています。

 発病は、ウイルスに感染してから10~12日間の潜伏期を経た後で、発熱やせきなどの症状が出ます。38度前後の発熱が2~4日間続き、せき、鼻みず、くしゃみなどの上気道炎症状と、結膜充血や眼脂(目やに)などの結膜炎症状が現れてきます。乳幼児では下痢、腹痛などの消化器症状を伴うことも少なくありません。

 発病初期の段階に、口の中にやや隆起した1ミリメートル程度の小さな白色の斑点が出現します。これは麻疹に特徴的なもので、1896年に報告した米国の小児科医の名前にちなんで「コプリック斑」と呼ばれています。この時期を過ぎるといったん解熱傾向となりますが、半日ほど経った後に高熱(多くは39度以上)が出るようになり、同時に体の表面に発疹が現れます。発疹は顔面、体幹部、手足の末端にまで広がります。

 発疹の出現から3~4日間高熱が続いてから、やがて解熱傾向となります。上気道炎や結膜炎症状も軽くなり、発疹は黒ずんでいきます。発症後7~10日後に回復していきます。

 麻疹を発症した場合は免疫力が低下するため、しばらくは他の感染症にかかると重症化しやすく、体力や食欲、活動性が戻るまでには1カ月ぐらいかかることが珍しくありません。麻疹にはさまざまな合併症がみられます。その約半数が肺炎で、頻度は低いものの脳炎になることもあります。この二つの合併症は麻疹による二大死因ですから注意が必要です。

 また、麻疹では発熱が1週間ほど続いたり、他の症状も強かったりするため、たとえ合併症を伴わなくても入院が必要になることが少なくありません。

 麻疹に対する特別の治療法はなく、患者一人ひとりの症状に応じた治療が必要となります。中耳炎、肺炎など細菌性の合併症を起こした場合には、抗菌薬の投与が必要となります。

 麻疹の感染発症を防ぐ唯一の予防手段は、あらかじめワクチンを接種して麻疹に対する免疫を獲得しておくことです。日本では、麻疹風しん混合ワクチン(MRワクチン)の定期接種が行われています。

 日本における麻疹の年間発症数は、2012年 283人▽13年 229人▽14年 462人▽15年 35人▽16年 165人▽17年 189人▽18年 200人(8月15日まで)と推移しています。

 麻疹の小流行は今でも日本各地で起こっています。世界にはまだ麻疹が押さえ込まれていない国々が多く、外国からの旅行者などが海外で麻疹に感染したことに気づかずに日本を訪れ、その人が各地を移動することが原因の一つと考えられます。

 マスクやうがい、手洗いなど、どんなに注意しても麻疹の感染予防は困難で、唯一の予防策は予防接種です。麻疹の予防接種を受けていない人は予防接種を受けた方がいいでしょう。予防接種を受けたかどうかわからない、麻疹にかかったことがあるかわからないといった人は、医療機関に相談してみてください。医療機関では麻疹の抗体価を測定し、その結果をふまえて予防接種が必要かどうかを判断します。

 麻疹を発症したことがある人は、再び麻疹を発症することはありません。ただし、発熱や発疹が出現する風疹や川崎病など他の病気にかかったのに、それを麻疹と思い込んでいる場合がありますので注意してください。

<アピタル:弘前大学企画・今こそ知りたい! 感染症の予防と治療>

http://www.asahi.com/apital/healthguide/hirosaki/

(弘前大学大学院医学研究科小児科学講座助教 大谷勝記)