[PR]

 動物実験にサルを使う先端医療などの研究で、中国の存在感が増している。

 中国南部、雲南省昆明市。この街の中心部から車で約1時間離れた山中に、新しい研究棟が連なっていた。省政府が運営する「雲南中科霊長類生物医学重点実験室」は、世界最大級の研究施設だ。東京ドーム2・8個分ほどの敷地内では、アカゲザルとカニクイザルの計4千匹を飼っている。「サルがいる建物だけで70棟以上ある」。職員が指さした壁の向こうには、三角屋根の飼育小屋がずらりと並んでいた。

 施設では、サルを使った動物実験で、難病の治療に向けた研究が進んでいる。受精卵の遺伝子を編集し、発病の仕組みや治療法がわかっていないヒトの難病を発現させる。そのサルを観察し、遺伝子に変異が起きてから発症するまでの過程や、どんな薬が効くのかを調べている。

 理事長の季維智・昆明理工大特別教授は「サルは生物学的にヒトに近い。病気の現れ方も似ている」と利点を説明する。パーキンソン病など、ヒトの難病について、発病の経過などが解明されつつあるという。

 パーキンソン病の他には、デュシェンヌ型筋ジストロフィーや、筋肉を動かしにくくなる筋萎縮性側索硬化症(ALS)、乳児期に言語や運動能力の成長が遅れるレット症候群などを対象にしている。

 まだヒトの治療に生かせるほどの成果はないが、発病の経過をつかみつつあるものもある。例えば、パーキンソン病の3歳のサルでは、症状が出る前の段階で、脳の神経細胞に変化が見られたという。季は「このときに対処できれば、発症前に治療できるようになるかもしれない」と話す。

 一方、動物実験でサルを使うことを巡っては、動物愛護や倫理面の問題から、欧米の大学や研究機関は規制を強めつつある。

 欧州では飼育数が減少しており、米国では国立保健研究所(NIH)がチンパンジーを用いた実験を廃止するなど動きが出ている。

 そんな中、中国はサルの動物実験を巧みに活用し、研究で有利な立場をうかがう。英科学誌ネイチャーは2016年、こうした中国の台頭を「Monkey kingdom(サルの王国)」と紹介し、中国が創薬や臨床研究で「世界のリーダーになりつつある」とする分析を掲載した。

 具体的な成果も表れつつある。中国科学院は今年1月、世界初となるサルの体細胞クローン作りに成功したと発表した。実験には大量のサルの卵子が必要になる。

 サルを使った医療研究に取り組む医薬基盤・健康・栄養研究所(茨城県つくば市)の山海直・主任研究員(霊長類医科学研究センター)は「実験がやりやすい中国に研究者が一極集中してしまう」と懸念する。その上で、「老化や霊長類に特有な感染症、脳の病気など、サルでしかできない実験もあり、サルを使った実験の重要性は高まっている。日本はそうした分野に注力すべきだ」と話す。(昆明=戸田政考)

■動物愛護の観点「欧州ほど強く…

有料会員限定記事こちらは有料会員限定記事です。有料会員になると続きをお読みいただけます。

有料会員限定記事こちらは有料会員限定記事です。有料会員になると続きをお読みいただけます。

有料会員限定記事こちらは有料会員限定記事です。有料会員になると続きをお読みいただけます。

有料会員限定記事こちらは有料会員限定記事です。有料会員になると続きをお読みいただけます。

980円で月300本まで有料記事を読めるお得なシンプルコースのお申し込みはこちら