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 「国を持たない最大の民族」と呼ばれるクルド人が、イラクの自治区の独立を目指した住民投票から25日で1年が経った。中央政府や周辺国の反対で計画は頓挫し、混乱を招いた。30日に自治区の議会選挙が予定されるが、自治区政府への住民の不信は根深い。

 住民投票前は自治区政府が実効支配していた北部の油田地帯キルクーク。投票直後に中央政府の進軍で制圧された。

 「クルド人の国なんてどこにあるんだ。独立と言ってたのは、どうなった?」

 クルド人のフォークリフト運転手マルワン・サイードさん(33)は自宅近くの検問所で、イラク軍とともに展開する軍事組織のアラブ人兵士に詰め寄られた。

 地域では多民族が長く共存してきた。サイードさん自身、アラブ人、トルクメン人がいる地区に住み、宗教上の記念日には相手の家を訪ね合った。クルド人のアイデンティティーが大切だと考え、住民投票は独立に賛成したが「民族間に溝ができてしまった。ともに暮らす人たちとわかり合えないのは、つらい」とうつむいた。

 キルクークにあった自治区政府の治安組織で調理係だったクルド人のアブドルナセル・フセインさん(32)は昨年10月、自治区の中心都市アルビルに避難した。戻れば中央政府側の軍事組織に拘束される危険があるという。妻、幼い2人の娘と、約30平方メートルの借家に身を寄せる。「居心地は良くないが、ここには少なくとも安全がある」

 昨年の住民投票では、仮にアラブ人やトルクメン人との関係が崩れても、長年の夢がかなうと思い賛成に投じた。キルクークなど中央政府との係争地からは住民投票後、一時18万人が避難したとされ、今も戻れない人が多い。

広がる喪失感、政治不信

 自治区東部のスレイマニアに住む公立大学職員バランドゥ・アハマドさん(32)は月収が130万イラクディナール(約12万円)から3割減った。キルクークなどを失い自治区財政が悪化したためだ。「独立は死ぬまで支持する。でも結果を見れば、当時は『ノー』と言うべきだった。振り返ると夢を見ていたような気分だ」

 自治区では30日、2013年以来の議会選挙(定数111、任期4年)がある。住民投票を主導した最大与党・クルディスタン民主党(KDP)と、連立を組むクルディスタン愛国同盟(PUK)が政権の座にとどまるかが焦点だ。

 だがアルビルのNGO臨時職員ラバル・ラズガルさん(39)は「将来の何かが変わるとは思えない」。住民投票後の喪失感と政治不信が広がっている。

 与党KDPのホシヤル・シウェ…

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