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 20日にあったラグビーワールドカップ(W杯)日本大会の1年前イベントで、国際統括団体ワールドラグビーのビル・ボーモント会長は開催地のひとつである岩手県釜石市へのメッセージを語った。「ラグビーが触媒となって、東日本大震災からの釜石の復興につながることを願っている。ラグビーで笑顔を取り戻していただきたい」

 12会場で唯一、新設されたのが釜石鵜住居復興スタジアム。8月19日にオープンしたばかりだ。その開幕日に、ラグビー界のある親子がプレーした。

 まず社会人7連覇を達成した新日鉄釜石と神戸製鋼によるOB戦。釜石シーウェイブス(SW)の最高顧問を務める高橋善幸さん(53)がグラウンドへ。高橋さんは明大の元主将でナンバー8、釜石を選手、監督として支えた。その次の試合では、SWがトップリーグのヤマハ発動機と対戦。高橋さんの息子の聡太郎(24)が出場した。

 聡太郎は釜石高1年の時に被災した。大学は父と同じ明大へ進学。その間、地元がW杯の開催都市に選ばれた。今季2年目、FWリーダーを務める聡太郎は「被災の頃からは想像もできない。ラグビーの町・釜石にこんなスタジアムが出来て誇らしい。W杯という一瞬のお祭りで終わるのでなく、発展の旗印にしたい」と語った。“復興”ではなく、“発展”という言葉を使ったことに、スタジアムが長く愛されてほしいという気概がみえた。

 W杯は2試合が行われるが、スタジアムはその先の寿命の方が圧倒的に長い。市ではラグビー以外に野外コンサート、観光のフードフェスなどさまざまな活用を考えているが、善幸さんは「うまく使えないと次の世代にのしかかる。若い世代の発想で、どんどん新しいことにチャレンジして発展のシンボルにしてほしい」と語る。誘致活動の時から、「生活の確保に力が注がれていた」ことを身をもって知っていたし、表には出にくい声も耳にしていたからだ。

 高橋親子には「W杯で復興を世界に発信する」ということだけでなく、SWがトップリーグに昇格するという共通の目標がある。実現できれば、スタジアムが市民の最高の財産になる。(能田英二)