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 北海道地震で多数の住宅が全壊した5市町の仮設住宅をめぐり、説明会や入居手続きが始まっている。札幌など2市は賃貸住宅が多く、今月末にも提供が始まる。一方、厚真など3町は賃貸住宅が少なく、仮設住宅の完成は早くても10月末で、避難所生活が長引くおそれが出ている。

 道庁によると、道内の住宅被害は24日現在、全壊は5市町の156棟、半壊は日高町を加えた6市町の434棟。仮設住宅はプレハブなどの「建設型」と賃貸物件を借り上げる「みなし仮設」がある。

 札幌市は賃貸物件が多く、全てみなし仮設で対応し、今月末までに提供を始める予定だ。隣の北広島市も建設型はゼロ。25日以降、13戸以上のみなし仮設を順次、提供する。

 これに対し、厚真などの3町はみなし仮設や公営住宅で対応しようとしたが、町内に物件が少なく、建設型も進めている。仮設住宅に入れるのは、全壊と大規模半壊などの被災者に限られるが、第1期として3町で計130戸の建設が決まった。足りない分は追加で建設する方針だが、時期は未定という。(伊沢健司)

「どこでもいいから入りたい」

 36人が犠牲になった厚真町では24日、避難所の小学校など8カ所で説明会が開かれた。出席した農家の田口平作さん(81)と和子さん(78)夫妻は自宅が全壊。隣の苫小牧市の知人宅に身を寄せる。

 25日に着工し、10月末に完成する第1期分に入居できる予定だが、毎日、自宅まで通い、トマトやタマネギを収穫し、札幌市で販売を続ける。1週間ほど前には疲労がたたって病院に搬送された。「住むところが早くほしい」と話す。

 同町の幌内地区で一人暮らしだった女性(81)の隣家は、土砂崩れで3人が犠牲になった。自宅は土砂を免れたが、地震で壊れて住めない。「おばあちゃん大丈夫?」と声をかけてくれる人がいる幌内が好きだ。建設型でもみなし仮設でも、住宅が用意されるなら「生まれ育った町を出たくない」という。

 町では最大130戸程度の仮設が建設される見通しだが、第1期は85戸まで。建設型より早く入居できるみなし仮設は、賃貸物件が少なく難航している。空き家の活用も考えたが、水回りなどの修理が必要で難しいという。

 住宅230戸の全半壊が確認されている安平町。23日に説明会があり、午前と午後でそれぞれ100人ほどが集まった。町は25日に第1期工事を始め、10月末までに20戸を完成させる予定だが、それ以降は決まっていない。みなし仮設の約15戸を合わせても足りていない。住民の意向を調べ、入居戸数を確定してから追加工事に取りかかる考えだという。

 同町の小塚恵子さん(73)は地震で自宅入り口のドアが閉まらなくなった。夫は人工透析が必要で、避難所に入っていない。一部損壊だと仮設に入れないまま寒い季節を迎えることになる。「年金生活で、修理したり新しい家を建てる余裕はない。どこでもいいから入りたい」(今泉奏、遠藤美波)

「みなし仮設」、地方では賃貸の確保困難

 暮らしの復興に向けた拠点となる仮設住宅。阪神・淡路大震災ではプレハブや木造の「建設型」がほとんどだったが、最近は自治体が賃貸住宅を借り上げ、被災者に提供する「みなし仮設」の活用が増えている。

 その契機となったのが、東日本大震災だ。津波に襲われ、原発事故が起き、避難先は広域化。建設型だけでは対応しきれず、仮設住宅12万3723戸のうち6割がみなし仮設だった。熊本地震ではさらに活用が進み、みなし仮設の割合は8割に上った。政府は南海トラフ地震が起きた際、仮設住宅が最大で205万戸必要になると推計。みなし仮設のほか、空き家の活用も促している。

 みなし仮設は早期に入居でき、居住性にも優れる一方、地方では賃貸物件を確保しにくいという問題点がある。建設型は完成に時間を要する上、比較的簡易な造りで住居としての環境が十分ではないと指摘されている。(岡戸佑樹)