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 英国が欧州連合(EU)から離脱する交渉がまとまらない。双方が折り合えないまま、離脱する3月29日まで半年。交渉が決裂し、経済が混乱する事態も現実味を帯びてきた。交渉はどこへ向かうのか。(ロンドン=下司佳代子、寺西和男)

 英首相官邸で21日、演説したメイ首相の声は上ずり、怒りがにじんだ。

 「交渉終盤にもなって、提案をただ拒むのは受け入れがたい」

 前日までオーストリアのザルツブルクで開かれたEU非公式首脳会議後の記者会見で、EU首脳会議のトゥスク常任議長が英国の提案を「うまくいかない」と切り捨てたことで、メイ氏は面目を潰されていた。

 英国は、モノに限ってEUルールに従い、円滑な貿易を続けることを提案する。一方、日本など第三国とはEUにとらわれず自由貿易協定を結ぶ考えだ。人の移動の自由は認めず、移民の流入も制限する。

 EUにしてみれば「人、モノ、サービス、資本の移動の自由」を不可分とする基本理念に反する「いいとこ取り」で受け入れがたい。EUは、北アイルランドだけをEUの関税同盟に残すことを提案している。だが、これには英国が「領土を分割するようなこと」(メイ氏)と猛反発する。自国案を押し通そうという態度が、フランスのマクロン大統領らの不興を買い、EU側は態度を硬化させた。

陸続きの北アイルランド課題

 英領北アイルランドとEU加盟国アイルランドが一つの島であることが、問題を難しくしている。

 かつて北アイルランドでは、英国統治を望む多数派プロテスタント系住民と、アイルランドとの統一を求める少数派カトリック系住民が対立し、多数の犠牲を出した。この歴史的背景を考慮し、英・EUは厳しい国境管理を復活させないことでは一致した。だが、離脱後、陸続きの土地で人やモノのやりとりをどう管理していくのか、具体案で折り合えないのだ。

 3月末の離脱までに、双方は離脱条件を定める「離脱協定」と、その後の通商関係などを定める「政治宣言」の合意を目指す。議会承認手続きを考えれば、10~11月が期限だ。

 国境問題の解決抜きに離脱協定は結べない。合意がないまま離脱すれば、英・EU間の貿易で急に関税や税関検査が復活し、物流の停滞が予想される。物価の上昇や通貨安も招き、市民生活が混乱する恐れがある(シナリオA)。

 双方とも経済への打撃は避けたい。メイ氏は21日の演説で、国境問題で何らかの新提案をすることを示唆。離脱協定の合意にこぎ着けたい考えをにじませた。政治宣言はあいまいな表現にとどめ、協議を移行期間に実質先送りする案も浮上する(シナリオB)。

 英国の与野党の一部では、離脱に関する2度目の国民投票や解散総選挙の実施を求める声も上がる。もし実現すれば、EU残留を含めた大転換もありうる(シナリオC)。

 昨年の総選挙で負けたメイ氏は、政治基盤が弱い。離脱をめぐる英政府案は、EUに懐疑的な強硬離脱派からも親EU派からも評判が悪く、多方向から修正圧力がかかる。メイ氏がEU側に容易に妥協すれば、強硬派にくすぶる倒閣論が火を噴きかねず、仮にEUと合意できても英議会で否決される可能性が残る。

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