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 大手電機メーカーの中でも堅実な社風で知られる三菱電機。家電も奇をてらわず、性能や品質にこだわった製品を出してきた。それが最近、「見た目重視」で活路を模索し始めている。

 「部屋に置いておいてすぐ使える、がコンセプト。掃除機に見えない形が特徴です」。三菱電機が25日に東京都内で開いた新型スティック掃除機「ZUBAQ(ズバキュー)」のPRイベント。デザイナーが企画から携わったこだわりの外観は、充電台に置くと、細長い「Q」のような形になる。10月から売り出す。

 家庭用エアコンでは、2年前から丸みを廃して直線を強調したモデルを投入。色は定番の白のほかに赤も用意した。これも企画したのはデザイナーだ。店頭では省エネや自動温度調整機能などの性能が比較されやすいが、あえて見た目のインパクトを前面に出した。

 デザイナーが発案した製品には、過去にヒット作もある。2009年から売る箱形の炊飯器だ。食器棚に入れても使えるように蒸気の出ない機能もつけた。想定価格は8万円程度と高価格帯ながら、累計20万台超が売れた。「家電の評価軸は『安くて省エネ』だったが、最近になって『高くても楽でおしゃれ』というのが出てきた」と阿部敬人・同社デザイン研究所長は話す。

 三菱電機は1990年代から経営改革を加速。パソコンや携帯電話、半導体メモリーから手を引き、工場の自動化機器やエレベーターに注力してきたが、家電の全面撤退はしなかった。14年には三つのダイヤを組み合わせた「三菱マーク」の製品ロゴを30年ぶりに復活。有名タレントを使ったCMも流して売り込んだ。

 家電事業は、稼ぐ力を示す売上高営業利益率が5%ほどで、工場の自動化機器事業や自動車部品事業の10%超と比べて低い。効率よく稼ぐ経営をめざすなかで足かせになりかねない。それでも撤退しないのは、「一般消費者向けの製品は会社のブランドイメージを訴求できる」(杉山武史社長)と考えるからだ。

 家電を通して会社の知名度やイメージを向上できれば、採用活動で有利になり、社員の士気も高められる。来春卒業予定の学生の就職人気ランキング(楽天調べ)は136位で、同業のソニー(36位)や日立製作所(53位)と差がある。

 実は、三菱電機には「見た目重視」路線に活用できるノウハウがある。デザインの特許といえる「意匠」の登録だ。17年の国際出願件数は世界11位で、国内企業ではトップを走る。

 意匠登録による成功例の代表が、手洗い後に使うハンドドライヤーだ。両側面をくりぬいた形を登録して他社に模倣されないようにし、国内シェアは4割に達する。国内トップのエレベーターでも、階数や開閉ボタンを登録している。

 半導体事業で勢いのあった90年代、米国の同業メーカーから特許権侵害で訴えられ、高額の使用料を支払わざるを得なくなった。その苦い経験から特許などの知財戦略に力を入れ、意匠も重視するようになったという。知財担当の加藤恒常務は「グローバル競争の中でも会社にとって重要な資源になる」とみる。

 だが、世界の「勝ち組」は先を行く。米アップルは工業デザイナーに製品開発の権限を与え、iPhoneなどの世界的なヒット商品を生み出した。韓国・サムスン電子は海外デザイン会社からの人材獲得も強化する。一橋大大学院の鷲田祐一教授(マーケティング論)は「技術だけでは海外企業にすぐ追いつかれる。日本勢はデザイナーの視点を生かした商品開発をもっと進めるべきだ」と指摘する。(高橋諒子)