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 国連総会を舞台に米国とイランの対立が先鋭化している。両首脳は互いを非難する演説に終始し、トランプ米大統領は26日、初めて議長を務めた安全保障理事会でも「かつてないほど厳しい追加制裁を検討している」とイランを威嚇した。欧州などは多国間外交で米国抜きの核合意維持を図るが、米国は強く反発している。

 25日に始まった国連総会の一般討論演説で、ハイライトの一つは、米国とイランの対決だった。

 仕掛けたのはトランプ氏だ。「イランの指導者は国家の資産で私腹を肥やし、中東に混乱と死、破壊の種をまいている」と批判。「イランの政権が血まみれの計画を進める財源を断つ」と制裁の必要性を唱え、「全ての国にイランを孤立させることを求める」と協力を呼びかけた。

 11月の中間選挙を控え、トランプ氏は好調な経済による「繁栄」と、北朝鮮問題を進展させたという「平和」をアピールする。次なる「平和」実現のためのターゲットがイラン。国際社会に制裁に賛同するよう呼びかけて圧力をかけ、武力行使もちらつかせながら、有利になるようトップ同士の交渉に持ち込む。

 北朝鮮を相手に使った手法だ。トランプ氏は25日のコロンビア大統領との会談冒頭、記者団に「我々は、イランが北朝鮮と同じような道をたどることを願う」と語った。

ロハニ師、保守強硬派に配慮

 これに対し、イランのロハニ大統領は「米国の制裁再開は一方的で違法だ。経済発展の権利を侵害し、世界貿易にも混乱を起こしている」と米国を非難。米国が核合意に復帰しない限り、米国との対話には応じない姿勢を強調した。

 ロハニ師はさらに米CNNのインタビューで「イランから会談を要請したことはない」と語った。トランプ氏が7月末に会談に応じる姿勢を表明し、イランでも首脳会談への機運が高まった。だが、国内では最高指導者ハメネイ師の影響下にある保守強硬派の反対が根強い。米国の制裁再開による経済悪化を受けて、対外融和路線のロハニ師は批判にさらされており、保守強硬派に配慮せざるを得ない状況だ。

 また、22日に南西部アフワズで軍事パレードが武装集団に襲撃され少なくとも25人が死亡したテロ事件を受けて、同国の精鋭部隊・革命防衛隊が米国の関与を示唆。報復を宣言するなど反米感情が高まっている。このため、交渉に応じれば「米国の圧力に屈した」との批判は免れず、簡単には交渉に応じられない事情がある。

米国と欧州でも広がる溝

 イランと米国の批判合戦が続く中、トランプ氏が初めて議長を務める国連安全保障理事会の会合が26日に開かれた。「大量破壊兵器の不拡散」がテーマだが、トランプ氏は冒頭、「イラン政権は中東地域のテロのスポンサーであり、紛争をたきつけている。絶対に核兵器を持たせてはならない」と真っ先に批判した。

 核合意に関しても「現金が欲しいイランに現金を与えた。それは核兵器を搭載するミサイルの建造費やテロの資金になっている」と訴えた。トランプ政権は、イラン糾弾の場として安保理も利用した形だ。

 一方、欧州連合(EU)や英独仏など核合意の当事国は、イランを合意にとどまらせるための多国間の協議を続けている。マクロン仏大統領はこの日の安保理で「制裁と封じ込め政策ではイラン問題は解決できない」と米国を牽制(けんせい)した。

 24日には国連本部で、EUやイランなどの外相級会合が開かれ、米国の制裁を受けないようにするため、EU加盟国が、イランとの原油取引などの維持に向けて決済を手助けする枠組みをつくることで合意した。ユーロなどを使った決済システムでイランが残留条件とする「経済的利益の保証」を目指すのが狙いだ。

 ただ、詳細は不明で、欧州企業などをイランに踏みとどまらせることができるかは不透明だ。

 EUなどの動きについて、ニューヨークで25日に開かれた反イラン核合意を掲げるNPOの会合に出席したポンペオ米国務長官は「地域や世界の平和に対して、想像しうる最も逆効果の手段だ」と批判した。(ニューヨーク=杉崎慎弥、土佐茂生)