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 薩摩藩主、島津家の別邸だった鹿児島市の「仙巌園(せんがんえん)」で、推定樹齢200年とされる五葉松の一種「ヤクタネゴヨウ」が伐採された。主な原因はシロアリの被害。明治維新の激動の時代に育ち、ドラマにも登場した名木が姿を消した。

 高さ約27メートル、幹回りは最大5・4メートルに及ぶ。「御殿」と呼ばれる邸宅に覆いかぶさるように枝を伸ばし、桜島を望む庭園のシンボルだった。NHK大河ドラマ「西郷どん」では、西郷隆盛と藩主島津斉彬が相撲を取る回で、背景に大きく映し出された。同園は大河ドラマ「篤姫」や「翔(と)ぶが如(ごと)く」のロケでも舞台になった。

 同園によると、ヤクタネゴヨウは鹿児島県の種子島と屋久島にしか自生せず、環境省のレッドリストで絶滅の恐れが高い「絶滅危惧IB類」に指定されている。持ち込まれた経緯は不明だが、1922(大正11)年、英国皇太子が来園した際の写真に群生が写っている。そのうちの1本だけが残ったという。

 近年、ロープで支え倒木を防いできたが、8月の台風で長さ12メートルの枝が折れ、内部の深刻なシロアリ被害が発覚した。同園を運営する島津興業の安川周作専務は「斉彬も眺めたであろう大切な木。明治維新150年の節目に、寿命が来た」と悔しがる。

 伐採作業は9月25日に始まり、隣接する邸宅を傷めないよう進められ、28日、切り株に姿を変えた。後継として、同園は約20年前、園内に植樹したヤクタネゴヨウを育てていく。(野崎智也)