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 「飲みニケーション」について、賛否両論、さまざまな意見をいただきました。働き方改革と言われつつ、職場の飲み会がすぐなくなることはなさそう。せっかくやるなら、仕事にもプラスになる有意義な場にしたいもの。そのためにはどうすればいいのか。そもそも飲み会は「業務」なのか。来たるべき忘年会シーズンに備えて、みなさんと考えます。

妻の妊娠を機に親睦組織を退会

 都内の会社員の男性(36)は4年前に会社の「親睦会」を退会しました。親睦会は部署ごとに組織され、毎月給料日に1人数千円を積み立て、飲み会や社員旅行、職場のお茶代などに充てられていました。会費は部署や役職によって異なり、1千~7千円ほどだったそうです。

 男性は当初、飲み会について「ざっくばらんな雰囲気で、仕事やプライベートの話ができる」と感じていましたが、次第に「割に合わない負担感」が強まりました。幹事の時は会費集めに回り、飲み会の場所探しは「満足してもらえる酒や料理か」を確認するための下見が必須。会の最中に「酒が遅いな」など不満が聞こえれば小さくなり、参加者としても、上司のグラスが空いていないか気を使います。ある時「出ないと会費がもったいない」と思っている自分に気付いたそうです。

 転機は妻の妊娠でした。出産に向けた準備を進める妻を見て、「これからは定時で帰ろう」と決意。「参加しないと変に思われるかも」「自分はわがままなのでは」などと悩みましたが、「妻は飲み会どころじゃなく、普段の生活をどうするかで悩んでいるのに、俺はなんてばからしいことで――」と思い至ったといいます。勇気を出して幹事に退会を告げると、「規約にないので受け付けられない」。規約の改正を申し出ましたが、そのままうやむやになり、次の部署に異動した際に「入らないことにしているんです」と告げたところ、あっさり認められました。さらに、職場のお茶を飲めなくなったため給湯室でコーヒーを作っている男性を見た幹事が、規約を改正して「お茶だけ会費」を設定してくれたそうです。

 男性は「いろいろ心配しましたが、いやな思いは何もしていません。むしろ親睦会を抜けたことで、『好きな仕事を楽しくやろう』と周りの評価や顔色を気にしなくなりました」と話しています。

「参加は業務」認める判例も

 そもそも、職場の飲み会は「業務」なのでしょうか。日本労働弁護団の事務局次長を務める笠置裕亮弁護士に、労災認定などをめぐる訴訟を読み解いてもらいました。

 笠置弁護士によると、裁判所が飲み会と業務との関連性を判断する主なポイントとして、①会の目的と内容②参加者や参加人数③強制性――などが挙げられるといいます。「業務に関係する話をしたか」「上司や多くの社員が参加しているか」「事実上、強制参加ではないか」といった点です。

 飲み会と業務の関連性が認められた例として、金属製品製造会社で、上司から頼まれて研修生の歓送迎会に参加した後、車で研修生を送って会社に戻ろうとした社員が途中で事故に遭って死亡したケースがあります。一審、二審は「私的な会合で」「参加するか否かは任意だった」などとして、私的な会の送迎のための運転も業務ではないと判断し、労災が認められませんでした。しかし、2016年の最高裁では一転、歓送迎会を「会社の事業活動に密接に関連して行われた」「参加しないわけにいかない状況に置かれた」などと判断。労災が認められました。

 1997年には、JR東日本東北地域本社(当時)の社員が、助役らでつくる「管理者会」の飲酒を伴う会合の帰り道に自転車で転倒して死亡した事故が労災にあたるか争われた裁判で、被告の労働基準監督署は「3分の1が欠席した」「超過勤務手当や懇親会費についての会社からの助成がない」などとして会合と業務との関連性を否定しましたが、仙台地裁は、管理者会での活動も勤務評定の対象となっていたことや、業務について話し合われたことなどから、労災を認めました。

 他にも、出張が多い管理職が社員との意見交換のために開いていた飲み会が、管理職にとって「業務の延長」にあたると認められ、労災認定の際に労働時間に算入されたケースもあります。

 一方、飲み会と業務との関連性が認められても、労災認定されないことも。社内で開かれた飲み会で飲み過ぎて駅のホームから転落して死亡した事故では、「参加は業務と認めるのが相当」と判断されたものの、「事故は強度酩酊(めいてい)状態になるまで飲酒しなければ生じなかった可能性が高い」などとし、労災とは認められなかった判例もあるそうです。(田中聡子)

部署超え・育児中…開催を支援

 上司と部下では飲み会で話したい話題に違いがある――。クラフトビール製造の「ヤッホーブルーイング」(長野)が今年、社会人800人に実施した「飲み会実態調査」で興味深い結果が出ました。

 上司が話したい話題は「趣味」(38・6%)がトップなのに対し、部下が最も聞きたいのは「会社の展望・将来」(49・6%)でした。部下から見ると、上司は自分より1・7倍多く話していると感じているという結果も。井手直行社長は「飲み会自体が悪いイメージを持たれるのはもったいない。互いに『楽しい』飲み会ならチーム力も上がり、会社の業績も良くなるはずですが」と話しています。

 狙いをもって社内の飲み会をすすめる会社もあります。クラウド名刺管理サービスのSansan(東京)が飲み会に補助(1人3千円)を出す条件は、他部署の社員が1人は含まれている場合。参加者は3人以内というルールもあります。「目的は明確。お互いの理解を深めるため」と担当する大間祐太人事部長。部署を超えて仕事のノウハウを分かち合えば、成長へのヒントが得られると考えています。

 育児などの事情で、飲み会に参加できない社員への配慮をする企業もあります。ソフトウェア会社のサイボウズ(東京)は、社内のイベントスペースで、ベビーシッター付きの飲み会を催しました。これまで2回開き、いずれも子育て中の社員は6人ずつ参加しました。いっしょに席を囲んだ社員たちも、ふだん聞けない話もあって有意義だと感じたようです。(金本有加)

仕事の理想語り合う 前向きな会に 三菱総合研究所プラチナ社会センター・松田智生主席研究員

 僕の本業は地域活性化や地域創生です。企業や自治体、大学や地域の人たちと関わる中で、職場によって飲み会の雰囲気が違うことをこれまで実感してきました。

 ダメな飲み会は上司が主に発言し、皆がヨイショ。「あいつは」「あの部署は」と主語は他人で、述語は過去形の会話ばかりです。他人へのダメ出しや愚痴、過去の自慢話が多く、不毛な気分になります。

 良い飲み会での会話は、主語は自分で、述語は未来形か現在形。発言者は偏らず、出席率も高いのが特徴です。仕事の意味や理想について、青臭い議論もされたりします。

 良い飲み会が開かれる職場は、仕事への姿勢も未来志向で会議も有意義ですが、悪い飲み会になる職場は、その反対でした。

 飲み会のあり方を見つめ直すことは、組織を見直すことにも通じると思います。

 例えば、愚痴と悪口は手っ取り早く盛り上がれる話題ですが、むなしくなってくるものです。30分とか1時間とか、最初にルールを決めてしまえばいいと思います。

 飲み会では、寡黙な人が秘めている情熱や、多弁な人の薄っぺらさなど、同僚の意外な面が見えることがあります。誰かと親しくなったり、評価されたりといった、人間の基本的な欲求を満たせる可能性がある場ともいえるでしょう。せっかくですから、前向きな会にしませんか。(聞き手・丸山ひかり)

本音聞ける・残業と同じ

 朝日新聞デジタルのアンケートに寄せられた声の一部を紹介します。

●「お酒には、口を滑らせる作用があり、シラフよりも断然、本音が聞ける可能性が高くなります。上っ面で、どれだけ時間をかけても、お互いが本音を出さなきゃ、打ち解ける時間は訪れません。チームで仕事の成果を出すためには、本音をぶつけ合うことが必要だと思います」(IT、ベンチャー 東京都・50代男性)

●「遅い転職、高卒、マイナーな部分を補ってくれたのは、飲み会でした。楽しく自然体でお酒を飲むことで、コミュニケーションが図れ、引き立ててもらいました」(サービス業 東京都・60代女性)

●「独身時代はほぼ義務のように参加でした。職場では聞けない話、勉強になること、ストレス発散などなど、良いこともありましたが……。一部武勇伝披露やら説教やらは面倒で嫌でした。参加メンバー次第ですかね。子どもできてからは参加できてないし、定時でさっさと帰るので、確かにコミュニケーションは減りました。が、面倒なことに巻き込まれることも減りました」(その他 福岡県・30代女性)

●「とにかく古い考えの人が多く、飲み会の席で決まる仕事があると思っている上司も多い。実際は、そんな仕事うまくいくはずもなく。時代錯誤も甚だしい。飲み会は皆本当は嫌がって、愛想笑いをしているだけなのに、それに気が付かない上司がほとんどである。仕事仲間との飲み会は日本の恥ずかしい伝統だと思う。飲み会に誘う上司は職場にしか仲間がいない、情けない人だと思い、仕事でもついていく気になれない」(官公庁、諸団体 北海道・40代男性)

●「取引先や会社は同じでも別の職場の人との飲み会は有意義だと思うが、同じ職場の人とは仕事できちんとコミュニケーションすべきと思うので、全く無駄。限られた時間なのだから、飲み会につかうのであれば、昼間は会えないような人と飲み会をやったほうがよい。また、他のかたの意見にあるが、そのような場所が人事に反映するような会社は社風としていいとはおもわない。(よかったという意見が多いが、逆にその場で変な話がでると、それが原因で不利益になっているひともいるのでは。そう言う恐れがある会社ほど欠席裁判がいやで出席率は高いのでは)」(製造業 神奈川県・40代その他)

●「年代が近い同僚が多ければ、近況報告も踏まえて話ができるので楽しいと思うこともあるが、年が離れている同僚・上司との飲み会はセクハラ発言や、無料のキャバクラ感を求められる空気感で、ただただ疲弊する。はっきり嫌がったり断ったりすると『キツイ』と言われるし、黙っているとエスカレートするのが毎回しんどい。飲みニケーションと言うならば、正常な判断ができるレベルを自分で見極めながら飲むことが絶対条件と思います」(その他 大阪府・20代女性)

●「普段聞くことがない、先輩方のプロジェクトに対する考え方や、大変な時の切り抜け方などアイデアを聞き出すことができる。人を間違うと、ただダラダラと愚痴を聞かされて深夜まで収穫なしの時も」(サービス業 福井県・30代女性)

●「飲み会は残業と同じだと思う。飲み会を待つかのように定時を過ぎても飲み会の時間までダラダラ残業、さらに二次会までやることだろうか。飲みニケーションとか言うけど酒が入らなきゃざっくばらんに会話ができない組織なんて風通しが悪い。就業時間内にコミュニケーションを図れればやる必要がないこと。これから立場に関係なく時短勤務が当たり前になれば人が集まりにくくなり自然と飲み会が減っていきその分密度の高いコミュニケーションを日頃から図るよう心がけるようになり時間の無駄が減っていいと思う」(金融・保険、商社 東京都・30代女性)

●「元中間管理職でした。町内会やPTAと同じく、古臭い考え方に固執する一部の層がしつこく残している風習です。仕事のお付き合いの間で『親睦』が必要ですか。仕事に必要な人間関係の構築や組織の連帯感ができると言うのは、業務に必要なコミュニケーションが仕事中に取れていない証しです。参加して当たり前と言う雰囲気があるなら、費用は会社持ち、残業手当をつけて『仕事』としてやるべきでしょう。20年以上前に属していた組織で時々「同窓会」があります。退職後も皆良き友人で、集合がかかれば全国から集まります。いまだに上司に平気で文句を言うし、部下も生意気なままですが、こういう職場を作ってこそ良き上司だと思います」(製造業 京都府・60代男性)

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