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 北朝鮮の李容浩(リヨンホ)外相は29日午前(日本時間30日未明)、米ニューヨークで開かれている国連総会で一般討論演説を行い、米国への強い不信感を訴えた。新たな非核化措置にも触れなかった。ポンペオ米国務長官は10月に訪朝するが、米国が信頼関係を築く措置を取らない限り、米朝協議の進展は難しいとの立場をはっきりさせた。

 李氏は演説で「米国への信頼がなければ安全の確信が得られず、核武装を絶対に解除できない」と主張。「平和構築と同時行動の原則の下、可能なことから段階的に実現する」と述べ、一方的な非核化措置は取らないという従来の姿勢を改めて強調した。

 そのうえで、李氏は「核実験場の廃棄などをしたが、米国の相応の回答を見られずにいる」と述べた。演説では、米朝関係の改善を評価する発言やトランプ米大統領を称賛する言葉もなかった。国連制裁に緩和の動きが見られないことへの不満も示した。

 南北関係筋によれば、北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長は9月、韓国の特使団や文在寅(ムンジェイン)大統領に米国への不信感を繰り返し表明。米国への譲歩を促す韓国の説得もあり、南北首脳会談合意で「北朝鮮は米国が相応の措置をとれば寧辺(ヨンビョン)核施設の永久廃棄のような追加措置をとる」とした。

 文氏は25日のインタビューで「相応の措置」について、終戦宣言のほか、平壌への米国の連絡事務所の設置、非核化後の経済協力を視野に入れた経済視察団の派遣、人道支援、社会文化交流などを挙げた。

 ポンペオ氏が訪朝しても、北朝鮮は米国がこうした措置を取らない限り、寧辺核施設の廃棄には応じないとみられる。米韓の専門家には、北朝鮮が多数の核施設を抱えるなか、寧辺核施設の廃棄が実現しても非核化措置として十分ではないとする見方が強い。

 李氏は国連演説で最近の韓国との密接な関係も強調。「当事者が米国ではなく、南朝鮮(韓国)なら、非核化問題も足踏み状態に陥っていなかった」と皮肉り、米国を牽制(けんせい)した。文氏も9月のニューヨーク訪問中、正恩氏を評価し、南北経済協力を進めたい考えを繰り返し強調した。

 李氏は、6月の米朝共同声明が履行できなかった場合、「予測もつかない災いの最大の犠牲者は米国になるだろう」とも主張。30日付の労働新聞(電子版)も「制裁と対話は絶対に両立しない」と訴える記事を掲載した。(ニューヨーク=牧野愛博)

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 北朝鮮の李容浩(リヨンホ)外相が29日午前(日本時間30日未明)、ニューヨークの国連本部で行った一般討論演説の要旨は以下の通り。

 金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長は4月、社会主義経済建設に総力を集中する新たな戦略的路線を示した。経済建設に集中するに当たり、平和な環境を必要としている。

 朝鮮半島の平和と安全を強固にするためのカギは、朝米共同声明の徹底した履行だ。共同声明が履行されれば、朝鮮半島の完全な非核化も実現するだろう。

 数十年間積み重なった朝米の不信の障壁を壊す必要がある。過去の朝米合意が履行できなかったのは相互信頼が不足していたからだ。平和構築と同時行動原則の下、可能なことから一つずつ段階的に実現するというのが我々の立場だ。

 朝鮮は核実験場の廃棄など善意の措置をまずとってきたが、米国の相応の回答を見ることができずにいる。逆に、米国は、非核化措置をまずとるよう要求するばかりか、制裁圧力を加え、終戦宣言の発表にまで反対している。制裁で我々を屈服させられると考えるのは、我々を知らない者の妄想に過ぎないが、我々の不信感を増幅させる。

 北南首脳会談は5カ月のうちに3回も行われた。平壌共同宣言が示すように、多くの分野で対話が活性化している。万が一、非核化問題の当事者が米国ではなく、南朝鮮(韓国)であれば、朝鮮半島非核化問題も現在のような足踏み状態に陥っていなかっただろう。

 米国に対する信頼がなければ、我が国の安全に対する確信もありえず、その状態で我々が一方的に核武装を解除することは絶対にあり得ない。非核化を実現しようという政府の意思は確固不動だが、米国が我々に十分な信頼感を持たせる場合にだけ実現が可能だ。

 朝米共同声明の履行に悲観的な声が出ているのは、米国の国内政治と関係している。

 相手に不信感を抱くという点では、我々の方にはるかに多い理由がある。米国は我々より先に核を保有した。70年前に我が国が誕生したときから敵視政策をとり、経済を封鎖してきた。朝鮮戦争では数十発の核爆弾を投下すると恐喝した。

 米国は自らがシンガポールでした約束を誠実に履行することが、究極的に米国の国益にかなう。朝米共同声明が米国内政治の犠牲になれば、予測もつかない災いの最大の犠牲者は米国になるだろう。

 国際社会は、我々の善意の措置に応え、経済建設に総力を集中する我々の努力を支持すべきだ。国連安全保障理事会が、今年の朝鮮半島に訪れた平和の流れから目を背けているのは正しいとは言えない。核実験や弾道ミサイル試射を中断して1年になるのに、制裁の解除も緩和もない。南朝鮮に駐屯する国連軍司令部は、板門店宣言の履行まで妨害する動きを見せている。