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 背丈は172センチ、目方は105キロ。胸板は厚く、腕は丸太のように太い。ごつい体を折り曲げ、お年寄りに寄り添う。「元気ですか」。目尻を下げると、柔和な顔だ。「気は優しくて、力持ち」を地で行く介護福祉士の山森智行さん(46)は昨年5月、世界一になった。

 リトアニアであった世界ベンチプレス選手権大会。男子マスターズ1(40~49歳)の105キロ級に出場し、272・5キロを持ち上げて初優勝を決めた。ライバルの米国選手を破っての栄冠に、「一心に続けていれば夢はかなう、と思った」。

 競技を本格的に始めたのは30歳を過ぎてからだ。中学、高校は柔道部で、腕力にもともと自信があった。卒業後、ゲーム制作会社のプログラマーに。ヘルパーの母親の影響を受けて「人とふれあう仕事が向いている」と27歳のときに介護の世界に転じた。

 28歳でジムに通い、鉄アレイ、ダンベルで体を作った。しかしあるとき、腰に鈍い痛みを感じた。お年寄りに話しかけるとき、ベッドに寝ているお年寄りの体を起こすとき、一日に何度も中腰になり、腰に負担がかかっていた。その頃、ジムから紹介されたのがベンチプレスだった。

 ベンチプレス競技は、ベンチに仰向けで横たわり、両手で押し上げるバーベルの重さを競う。32歳で出場した近畿大会で優勝し、全国大会で2位に。「一番になりたい」と挑戦心に火が付き、夢中になった。

 力任せで300キロ近いバーベルは持ち上げられないという。呼吸を整え、バランスよく持ち上げないと、肩やひじを痛めかねない。「単純に見えるが奥が深い。それがまた魅力」

 現在通う大阪市にあるジムで練習できるのは週に2回ほど。30代の頃は2日連続で練習しても寝れば筋肉痛が和らぎ、体力も回復した。しかし40代になり、疲れが取れにくくなった。「だからこそ、一番力がスムーズに出るフォームを追求している」。イメージトレーニングも重要な練習だ。

 来年の世界ベンチプレス選手権大会は日本で開かれる。階級を一つ上げ、2階級制覇を目指す。「金メダルを家族に見せたい」(室矢英樹)

 やまもり・ともゆき 1972年、高槻市出身。茨木市の介護老人保健施設「ライフポート茨木」に勤務。お年寄りの食事や入浴、排泄(はいせつ)の介助などを担当している。小学6年の次男が最近、ベンチプレスの練習を始めるようになった。

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