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 83年の歴史を終えた築地市場(東京都中央区)に代わり、豊洲市場(江東区)が始動した。相次ぐ「ご祝儀相場」に沸き、歩み始めた新市場の未来に期待の声が聞かれた。一方で、荷物を運ぶ車は大渋滞し、困り果てた業者の姿も見られた。

 午前5時半。全国から魚介類が集まった水産卸売場棟で、移転後初の生マグロのセリが始まった。鮮度を保つため、場内の気温は14・5度。マグロの赤みが見やすいよう緑色にされた床にマグロが並び、セリ人の声が響いた。

 長靴姿の小池百合子都知事が見守る中、卸売会社(大卸)の「大都魚類」の網野裕美社長が「築地は昭和、平成の時代を通じて国民の台所を支えてきた。これからは新しい時代にマッチした市場をめざすことが求められている」とあいさつ。セリでは、214キロの青森・三厩(みんまや)産のマグロが、この日最高値の428万円だった。ウニのセリでも、1箱400グラムの北海道産に20万円という高値がついた。マツタケも1箱30万円の高値で、ご祝儀相場に沸いた。

 「おめでとうございます」。約490の仲卸業者が店を並べる水産仲卸売場棟では、飲食店や鮮魚店から買い出しに訪れた人たちが口々に顔見知りの仲卸に声をかけた。

 「祝初荷」の旗が並び、名物の小型運搬車「ターレット」(ターレ)が荷物を載せて走り回った。1940年創業の水産仲卸「大芳(だいよし)」の宇田川浩社長(57)は「僕たちが豊洲の歴史を作る市場人になる。わくわくしている」。

 野菜や果物を扱う青果棟でも午前6時半にセリが始まり、籠を手にした買い出し人でにぎわった。売り場中央には、商品をその場で調理できる厨房(ちゅうぼう)を備えた新施設「フレッシュラボ」ができ、今後、買い出し人ら向けの料理イベントも開く。レストランやホテルなどに青果物を売る仲卸業者「定松」の牧泰利社長(53)は「市場は商品だけでなく、人と人がつながる場所。多くの人に来てもらいたい」と期待を寄せた。

 一方、初日の市場内は、あちこちで混乱もおきた。

 「いつになったら荷を積めるのか。動かないものを愚痴っても仕方ないけど、これはひど過ぎる」。豊洲市場から水産物を横浜市に運ぶ予定の配送業者(35)はあきれ顔だった。

 5階建ての水産卸売場棟の屋上駐車場に向かうスロープがトラックで大渋滞し、午前2時から2時間半経っても、荷積みの場所までたどり着けなかった。駐車場で荷積みを済ませる業者も続出し、渋滞が激化したとみられる。

 「セリ場に着くのが遅れた魚もあったみたいだ」。仲卸や大卸の担当者によると、渋滞でセリに間に合わず、翌日の取引に回すことになった魚介類もあったという。

 市場の敷地面積は築地の約1・7倍に広がり、売り場棟も三つに分かれたため、場内の案内図を手にした出入り業者も多かった。あるすし店主は「慣れるまで大変だよ、こりゃ」と苦笑。東京都荒川区から来た女性は「築地までは30分だったが、今日は1時間かかり電車賃も倍。これでは商売が難しい」とこぼしていた。(西村奈緒美、抜井規泰、有吉由香)