[PR]

 9月30日夜から1日未明にかけて東海地方を通過した台風24号。気象庁は1959年の伊勢湾台風に匹敵する高潮の恐れがあると注意を呼び掛けた。結果的に名古屋港では、伊勢湾台風の時より潮位は1・6メートル以上低かった。ただ、気象庁が過去の災害を引きあいにして警戒を訴えたのには理由があるという。

 30日午前に名古屋地方気象台で開かれた記者会見。担当者は伊勢湾台風の高潮(名古屋港で3・89メートル)を例に「伊勢湾、三河湾を中心に記録的な高潮の恐れがある」と発表。予想進路が伊勢湾台風と似ているうえ、最接近の予想時刻が満潮と重なるためだ。

 気象台によると、名古屋港の潮位は30日午後9時半ごろに最高の2・21メートルを記録したが、伊勢湾台風時よりも1・68メートル低かった。名古屋港管理組合によると、管理組合の独自の潮位測定でも、最高で30日午後9時33分の3・63メートルで、護岸の高さより1メートルほど低いところまでしか海面は上がらなかったという。

 気象台の担当者は「伊勢湾台風と同じぐらい内陸まで吹き込む強い風などの影響で高潮が想定されたが、予想進路より南側を台風が進み、思ったより影響を受けなかった可能性がある」と話す。

 今回の「伊勢湾台風」のように、よく知られている過去の災害を例にした表現は、気象庁と各地の気象台が相談しながら使っている。気象庁予報課の担当者は「地元の人にイメージしてもらいやすい」と話す。名古屋市の避難所では、事前の情報を頼りに避難を決めた人もいた。

 札幌管区気象台は、3月に道内であった暴風雪への警戒を呼び掛ける際、2013年に9人が亡くなった暴風雪を例にしたという。

 逆に、気象庁は過去の事例が無い場合は「経験したことがない」という表現を使うようにしているが、「むやみに過去の災害を引き合いに使わないようにも気をつけている」(予報課)。過去の災害で被害が少なかった地域の人にとっては「逆に安心材料になりかねない」ためで、「住んでいる地域の状況を見て、自ら安全かどうか判断することが大事」としている。(古庄暢)