[PR]

 全日本吹奏楽コンクール(全日本吹奏楽連盟、朝日新聞社主催)の中学校と高校の部が10月20、21の両日、名古屋国際会議場で開かれます。小説や漫画、アニメで親しまれている「響け!ユーフォニアム」の著者・武田綾乃さんは、かつて吹奏楽に打ち込んでいました。小説執筆にあたり、名古屋などでコンクールの取材をした経験も交え、思い出やコンクールの印象を聞きました。

 小学5年生のとき、友人に誘われて金管バンド部に入りました。すーごく手先が不器用。習っていたピアノは両手の指を使うけど、金管楽器は右手の指3本でピストンを押せば済む。不器用でもできると、はまりました。

 もともと低音が好きで、ユーフォニアムを始めました。低音で支えるところからメロディーまで演奏できて、おいしいところどり。重さだけが欠点でした。

 小学校では部員は20~30人ほど。マーチングコンテストに出ていて、5年生で「キャッツ」、6年生では「ジーザス・クライスト・スーパースター」を演奏しました。先生がすごく力を入れてくださったんですが、本番で全員フォーメーションを間違えて。最後の最後にだめになっちゃったと、みんな号泣しました。

 東宇治中学校でも吹奏楽部に入りました。ユーフォニアムがメインでしたが、テューバやスーザフォンも吹きました。当時は映画「スウィングガールズ」の影響で吹奏楽ブーム。強豪でなくても、部員は60~70人くらいいました。

 部内は、もめました。部活優先派と勉強優先派、勝ちたい人とそうでない人が交じっていた。初心者でもすごく伸びる子もいれば、長くやってもなかなかうまくならない子もいる。当時の私は、まさに「響け!ユーフォニアム」の主人公・黄前(おうまえ)久美子の状態に近くて、なんとか人間関係を調整しようとしていました。うまくいっていたかは怪しいですけど。

 京都府吹奏楽コンクールで3年間、中学校A部門に出ました。1年生のときは「第六の幸福をもたらす宿」(アーノルド作曲)、2年生では「絵のない絵本」(樽屋雅徳作曲)を吹きました。本番はすごく苦手。めちゃくちゃあがり症で全然落ち着けない。でも体が覚えているので、何も考えずに吹いていました。

 3年生では、「星の王子さま」(樽屋雅徳作曲)を吹きました。その年は、めちゃくちゃ優秀な指導者の先生が来てくださって、先生が言ったとおりにやれば1回の合奏で合わなかったところが合う。根性論だけじゃだめなんだって指導の大切さを感じ、その印象を小説にも生かしました。金賞でも関西吹奏楽コンクールに行けませんでしたが、ずっと銀賞だったのでうれしかったです。

 中学校で満足感があったので、高校では吹奏楽をしませんでした。小説を書くときは、強豪の高校で吹奏楽を続けていた友人に話を聞きました。関西吹奏楽コンクールまでは代表になれることに「ほっとした」。一方、良かろうが悪かろうが最後の全日本吹奏楽コンクールは、「みんな楽しかった」と言ったのが印象的でした。2014年には名古屋国際会議場へ全日本吹奏楽コンクールの取材にも行きました。

 吹奏楽は作品をつくるみたいなところがあります。仲間がいないと演奏が完成しない。うまが合わない子とも、ときにぶつかりながら一緒にやっていく。作品づくりの過程は苦しくてすごく大変で、本番の1回だけが快感。それが音楽、コンクールの性質だと思います。

 大人になると、一人であの舞台に立つことはまず基本的にはないですし、みんなで同じ目標に向かって頑張れるチャンスはどんどん減ってしまう。そうなったときにできない経験ができるのは、すごい貴重です。音楽は生もので、すべての大会が一度きり。やっているときは無我夢中で流れていくだけだと思うんですけど、その中でも目を開いて楽しんでほしいです。(聞き手・江向彩也夏)

    ◇

〈たけだ・あやの〉 1992年生まれ。京都府宇治市出身。作家。2013年、同志社大在学中に「今日、きみと息をする。」(宝島社)でデビュー。全日本吹奏楽コンクールをめざす吹奏楽部員らの姿を描く「響け!ユーフォニアム」(宝島社)シリーズは、漫画も含む発行部数が累計140万部に。3作目の劇場版映画「響け!ユーフォニアム 誓いのフィナーレ」は19年春、公開予定。著書はほかに「青い春を数えて」(講談社)など。