2020年度から始まる大学入学共通テストをめぐり、東京大学の入試監理委員会が9月、基本方針をまとめた。新たに導入される英語の民間試験について、成績提出を必須としない内容だ。民間試験をめぐる同大のワーキング・グループ(WG)座長を務め、同委員会の一員として議論に加わった石井洋二郎理事・副学長に、経緯や意図を聞いた。

     ◇

東京大入試監理委員会が決めた基本方針(2018年9月)

 2020年度に実施される一般入試では、①~③のいずれかの書類の提出を求める。

 ① 大学入試センターによって要件を満たすと確認された民間の英語試験の成績(ただし、CEFRの対照表でA2レベル以上に相当するもの)。

 ② CEFRのA2レベル以上に相当する英語力があると認められることが明記されている調査書等、高等学校による証明書類。

 ③ 何らかの理由で上記①、②のいずれも提出できない者は、その事情を明記した理由書。

民間試験の活用をめぐる東京大のワーキング・グループの答申(2018年7月)

提案1:出願にあたって認定試験の成績提出を求めない。

提案2:認定試験をめぐる諸課題への対応について文部科学省ほか関係機関からの具体的かつ詳細な説明を受け、十分に納得のいく回答が得られたらその時点で認定試験の活用可能性について検討する。

提案3:認定試験の(CEFRで)A2レベル以上の結果を出願資格とするが、一定の条件のもとに例外を認める余地を残し、可及的速やかに具体的な要件を定める。

     ◇

 ――なぜ、このタイミングで基本方針を出したのですか

 基本方針は本来、今年7月に出すことを考えていました。入試改革に向けて、受験生が準備する時間を確保するためです。

 しかし、民間試験の活用について多くの課題が指摘されているのに、拙速な結論を出すことはできません。「課題があっても走り出さないと改革はできない」と言う人もいますが、それはあくまで一般論で、受験生の進路や将来にかかわる問題は別です。

 結果的に受験生や高校の現場をお待たせしてしまいましたが、無理はできないと判断しました。

 ――もっと前から検討すればよかったのではないですか

 国立大学協会は昨年11月、「全受験生に両方の試験を課す」という基本方針を公表しました。東大はその前から慎重な検討を求める意見を国大協に伝えており、方針の公表後も何度か修正を求めましたが、結局反映されないまま、今年3月末にガイドラインが公表されました。

 そこで、この5月にWGを作って7月に答申をまとめ、さらに入試監理委員会で議論して9月末に方針を出したわけです。決して放置していたわけではありません。

 ――なぜ、2段階にわたって議論をしたのですか

 異なる民間試験の成績を公平・公正に比較することは困難ですし、経済的に豊かでない生徒や地方の生徒が不利になるという問題もあります。これらの課題が依然として残っているという認識は、WGでも、入試監理委員会でも同じでした。

 しかし、WGが諮問されたのは「民間試験の活用の是非」という点だけだったので、代案を提示するところまでは踏み込んでいません。そこで、入試監理委員会では、入試改革が目指している方向という本来の「目的」に立ち返って議論したわけです。

 今回の改革で一番問題なのは、途中から目的と手段が逆転してしまったことだと思います。これからの時代を生きるために英語のコミュニケーション能力が必要であることは明らかですし、WGの答申もその目的自体を否定してはいません。

 ただ、本来はまず高校教育で基礎力を養い、その成果を問うために大学入試があるはずなのに、入試を変えることで高校教育を変えようとする発想で議論が進んできた。これは逆立ちした考え方です。

 民間試験はあくまで手段のひとつでしかないのに、スピーキングが含まれているというだけで、これを活用することがいつのまにか目的化してしまった。これでは高校の授業が民間試験対策に走ってしまい、教育がゆがめられてしまう恐れがあります。

 本末転倒の議論が続いているうちに、何のための入試改革か、忘れられていたのではないでしょうか。

 ――改革の目的とはなんですか

 若者にグローバル化時代を生き…

有料会員限定記事こちらは有料会員限定記事です。有料会員になると続きをお読みいただけます。

有料会員限定記事こちらは有料会員限定記事です。有料会員になると続きをお読みいただけます。

有料会員限定記事こちらは有料会員限定記事です。有料会員になると続きをお読みいただけます。

有料会員限定記事こちらは有料会員限定記事です。有料会員になると続きをお読みいただけます。

980円で月300本まで有料記事を読めるお得なシンプルコースのお申し込みはこちら