「できるなら帰りたい」豪雨12人犠牲、団地の再出発

原田悠自
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 広島県熊野町は10日、7月の西日本豪雨による土石流で12人が亡くなった住宅団地「大原ハイツ」の一部地域に出していた避難指示を、約3カ月ぶりに解除した。豪雨で県内に出されていた避難指示はすべて解除された。土砂災害を防ぐ工事は各地で続く。

 山肌が大きくえぐれた裏山の谷筋に、巨大なワイヤネット(高さ5・5メートル、幅25メートル)がそびえ、さらに団地側に大型土囊(どのう)が幾重にも積まれた。県が土砂や岩の流入を抑えて二次災害を防ぐ応急措置で設けた。地下6・5メートルまで打ち込まれた杭がネットを支える。5日に完成したばかりだ。

 10日は朝から、住民たちがごみを出したり、荷物を整理したりした。同県府中町の民間住宅を県が借り上げた「みなし仮設住宅」で8月中旬から暮らす下野幸則さん(66)も帰宅し、庭の掃除に精を出した。

 自宅に大きな被害はなかったが、隣の家は土石流で激しく損壊。犠牲になった知人もいた。自宅で暮らし始めるめどは立っていない。「でも、できることならすぐに熊野に帰りたい」

 団地一帯には7月6日夜、裏山から土砂や巨大な岩が次々と押し寄せた。町は同日、団地の全域(約120世帯約300人)に避難指示を出した。このうち半数ほどが暮らす「土砂災害警戒区域」外のエリアは8月12日に避難指示を解除したが、区域内は避難指示が継続していた。

 県はワイヤネットの完成時期を当初は11月上旬と見込んでいたが、前倒しで工事を進め、避難指示の解除も早まった。来年中には砂防堰堤(えんてい)の完成を目指す。

 豪雨で大きな被害を受けた広島、岡山、愛媛の3県のうち、岡山県早島町(1世帯4人)と愛媛県西予市の4地域(計105世帯242人)では避難指示が継続している。(原田悠自)