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【アピタル+】患者を生きる・慢性肺血栓塞栓症

 肺の動脈に血のかたまり(血栓)が詰まる肺血栓塞栓(そくせん)症。急性と慢性があり、どちらも近年、患者が増え続けている。どんな人にリスクがあるのだろうか。慶応大学病院循環器内科の川上崇史特任講師に聞いた。

 ――急性肺血栓塞栓症は、エコノミークラス症候群としても知られています。どのような病気ですか。

 足の血管などにできた血栓が血液の流れに乗って肺に届き、肺の動脈が詰まる病気です。突然、呼吸困難になることが多く、重症の場合、死に至ることもあります。発症早期の死亡率は約10~30%と言われています。年間1万5千人以上が発症し、患者は右肩上がりで増えています。

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 ――どんな人がなるのでしょうか。

 血流が滞りやすい人や、血管が傷ついている人は発症しやすくなります。患者が増えている背景には、食生活の欧米化による肥満や、高齢化による寝たきりの人の増加があります。

 がんの治療歴のある人や、経口避妊薬(ピル)を使用している人などもリスクが高くなります。乗り物での移動で長時間同じ姿勢でいることや、災害時の車中避難(車中泊)にも注意が必要です。

 血栓を溶かす薬をのむことで病状が改善することが多いです。早い段階で治療を行えば比較的良好な経過をとる方も多いですが、近年、急性治療の後に慢性に移行する症例が一定数あることがわかってきました。

 ――どのくらいの人が慢性になるのでしょう。

 以前は1%未満との報告だったのですが、最近は4~8%が慢性化すると報告されてきています。

 慢性になると、血栓が溶けにくくなって血管内にこびりつくように広がります。さらに肺動脈の血流が滞って肺動脈圧が上がると、肺高血圧症を伴い、「慢性肺血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH(シーテフ))」になります。指定難病で、これまでに3千人以上が認定を受けており、増加傾向です。

 慢性になるメカニズムはわかっていませんが、点滴や抗がん剤の投与などのために体内にカテーテルが入ったままの人などはリスクが高いとされています。発症の仕方も様々で、明らかな急性の症状が見られないまま慢性になる人も多いです。

 ――診断や治療は、どのように行いますか。

 急性の血栓は造影CT検査で発見しやすいですが、慢性の場合は通常のCT検査で判別しにくく、判断が難しいです。最終的にはカテーテルなどで確定診断しますが、希少疾患であり、専門医が診断・治療をするのが望ましいでしょう。

 治療には、血栓を取り除く外科手術と、肺動脈を拡張する薬の内服、「バルーンカテーテル」で血管を拡張するカテーテル治療があります。一般的に、肺動脈の中でも心臓に近い太い血管にある血栓には外科手術が、心臓から遠い細い血管には薬やカテーテル治療が向いていると言われています。治療法は、専門施設の専門医による判断が必須だと考えます。

 

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<アピタル:患者を生きる・スポーツ>

http://www.asahi.com/apital/special/ikiru/(松本千聖)