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 精神科病院を廃止したイタリアで、精神障害者が役者を務めるプロの劇団が来日し、11、13日に公演する。役者たちは、精神障害と向き合いながら、地域社会で暮らす中で感じてきた自由な感性と葛藤を、舞台での表現にぶつけている。

 イタリアでは40年前、精神科の患者は自分の意思で医療を選ぶ権利があると規定した「バザーリア法」が施行され、入院による治療から、通院と地域での生活・就労支援に移行した。

 この劇団は「アルテ・エ・サルーテ」。北部ボローニャ地域の精神障害者らが集まり、2000年に設立した。地元の公立劇場を拠点に、国内外で公演を重ねてきた。役者のほとんどは精神障害者で、医療機関に通いながら劇団と労働契約を結び、地域で自立して生活。今回は、精神科病院に入院させられたフランス革命期の貴族サド侯爵が、ほかの入院患者とともに、フランス革命指導者マラーの死を通じて、自由を求める戦いを描いた劇中劇「マラー/サド」を上演する。

 出演するルーチョ・ポラッツィさん(47)は統合失調症に苦しみ、修理工の仕事も失った。「仲間と一緒に演劇に情熱を傾けているおかげで、人生が上向いたと思う。公演でお客さんとコミュニケーションを取るのが楽しみ」と話す。

 設立時から劇団に関わってきた演出のナンニ・ガレッラさん(67)は「普通の劇団より稽古のペースはゆっくりかもしれないが、プロの芸術家である彼らの演技が、新しい世界に目を開かせてくれる」という。

 公演は11日に浜松市のクリエート浜松、13日にイタリア文化会館(東京都千代田区)で開かれる。入場無料だが、13日の東京公演はキャンセル待ちの登録が必要。両公演の問い合わせは「東京ソテリア」(03・5879・4970)。(ボローニャ=河原田慎一)