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 岐阜市の野球用具店主らが、これまで売れ残っていたキズやシワのある牛革を使い、野球用グラブを作った。「生き物の命(革)に感謝し、道具を大切にする心を育んでほしい」との願いを込め、「革命グラブ」と名付けた。機能や耐久性に問題はなく、採算度外視で販売する。

 鮮やかなオレンジ色のグラブの中央に、牛をモチーフにしたマークと「A Thankful Heart」(感謝の心)の文字が刻印されている。キズやシワは、言われなければ気づかないほどだ。

 岐阜市で「竹中スポーツ」を営む竹中崇人さん(34)は昨年8月、ともにスポーツ用品店経営を学んだ千葉県鎌ケ谷市の「超野球専門店CV」の中村勇太さん(31)とともに、埼玉県越谷市のなめし革業者「ジュテル・レザー」を訪ねた。大手野球用具メーカーに牛革を納める同社で見たのは、キズやシワを理由に敬遠された在庫の山だった。

 同社によると、グラブには肉牛の革が使われることが多いが、近年はキズやシワが増えているという。世界的に牛肉の需要が高まる中、早く太らせようとすることもシワの一因だという。グラブは使う革の面積が大きいため、傷やシワが少ない革は限られる。

 動物の革にキズやシワはつきもの。革製のカバンや財布にあるシワが「個性」と評価されることもあるが、中村さんや竹中さんらは「キズがある野球グラブを買う人はまずいない」と口をそろえる。売れ残る分が上乗せされることで、牛革の値段は上がる。工賃や人件費の上昇もあるが、グラブの価格はこの10年で3割ほど高くなり、硬式野球用だと5万~6万円するグラブも珍しくない。「道具が高くて野球ができない」とあきらめる子どももいるという。

 「見た目ばかり気にして、牛の命を無駄にしていないか」。そう考えた竹中さんと中村さんは、ジュテル・レザーの沼田聰会長に革を無駄にしないグラブの製作を相談した。グラブメーカー「アトムズ」(奈良県桜井市)の協力も得て、「革命グラブ」が完成した。竹中さんと中村さんは、キズやシワをグラブの個性や味と捉えてほしいと願う。「頂いた命を大事にすることが、道具を大切にすることにつながる。消費者にも『見た目を過剰に気にしていませんか』と問いかけたい」

 革命グラブの定価は4万5360円(税込み)。長く使ってもらえるよう細かい部分まで丁寧に作り込んでおり、「利益はほとんどない」という。趣旨に賛同した岐阜、千葉、埼玉、長野、富山、愛知、岡山、新潟、福岡の9県10店舗で販売されている。問い合わせは超野球専門店CV(047・445・1359)へ。(室田賢)