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 「『国民の敵』という発言を懸念している」。米国の有力紙「ニューヨーク・タイムズ(NYT)」発行人のアーサー・グレッグ・サルツバーガー氏が、メディア批判を続けるトランプ大統領と7月にホワイトハウスで会談した際に、こう「直言」した。ただ、「大統領は考えると約束していたが、その後も批判のトーンに変化はみられない」という。

 サルツバーガー氏はニューヨークのNYT本社で朝日新聞のインタビューに応じ、トランプ氏との執務室でのやりとりを明らかにした。トランプ氏の反応については「正確な発言は忘れたが、『言いすぎだったかもしれない』ということも言い、考えると約束していた」と説明。「結局、行動に何の変化ももたらさなかったが、メディアの人間が本人に直接伝えたという事実が公に残ったことは重要だった」と振り返った。

 トランプ氏はNYTなどの大手メディアを「フェイク(偽)ニュース」「国民の敵」などの表現を使って厳しく批判している。

 サルツバーガー氏によると、7月の会談は大統領側から報道官を通じて要望があった。執務室でトランプ氏に対し、「『フェイクニュース』という言い方にはがっかりするが、『国民の敵』という発言をより強く心配している」と述べたうえで、「暴力を招くような危険な空気を生んでいる。こうした言い方は外国の独裁者が報道を抑圧する口実に使われる」と指摘したという。

 会談は、大統領側からの申し入れで非公開を条件に行われたが、大統領側が7月29日にツイッターで「ホワイトハウスでサルツバーガーと会った」と暴露。サルツバーガー氏は同日、会談したことを認める声明を出していた。

 また、朝日新聞のインタビューでサルツバーガー氏は、自らが先導してデジタル化を進めるNYTの今後について、「いずれデジタルだけの報道機関になるときが来る、という事実を受け止めなければならない」と述べ、将来的に紙の新聞を発行しなくなる日がくることになると認めた。

 サルツバーガー氏は、NYTがオンラインの音声番組であるポッドキャストやVR(仮想現実)、動きのあるグラフィックなど、紙媒体で伝えられないコンテンツの提供に力を注いでいることを強調。すでに「デジタル展開をする新聞社」ではなく、「新聞も出すデジタルメディア」になっているという考えを示した。