【動画】サウンド・アートの先駆者、鈴木昭男にまつわる展覧会=松本紗知撮影
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 駅のホームの階段だった。バケツいっぱいのピンポン球や空き缶を階段の上からぶちまけ、どんな音が鳴るか実験した。もう一度試そうとしたところ、鉄道公安職員に羽交い締めにされた。半世紀前のそんな「実験」が原点という芸術家が、日本のサウンド・アート(音による芸術)の先駆者であり、国際的に活躍する鈴木昭男(77)だ。彼にまつわる展覧会が和歌山県内の二つの美術館で開かれている。過去から現在に至る活動を通して見ることで、作家が音とどう向き合ってきたかが浮かび上がってくる。

 「実験」したのは1963年、名古屋駅でのこと。当時は建築を学んでおり、階段の図面をトレースしているうち、階段が音楽の小節線に見えてきたという。「自分の頭の中ではすごくいい音が流れていたのに、実際は『ガラン、ポシャン』という生の音でがっかりした」。そこでもう一度試そうとしたという。

 和歌山県立近代美術館(和歌山市)の特集展示「鈴木昭男 音と場の探究」は、この「階段に物を投げる」に始まる鈴木の活動の歩みを、約200点の資料で紹介している。

 70年代に鈴木が考案したエコー楽器「アナラポス」も展示されている。二つの缶を糸電話のようにスプリングでつないだもので、指でスプリングをはじいたり、缶に向かって声を出したりすると、音が反響して不思議な響きが生まれる。

 88年には、子午線上にある京都府網野町(現・京丹後市)で、秋分の日に1日耳を澄ます「日向ぼっこの空間」を発表。96年からは、野外でお茶を楽しむ野点(のだて)のように、自然や都市の風景に耳を澄ます「点音(おとだて)」を世界各地で開いてきた。そうしたプロジェクトの資料も展示室に並ぶ。

 一方、田辺市の熊野古道なかへち美術館の特別展「鈴木昭男 ―内在―」では、四つの新作を展示している。

 この美術館は金沢21世紀美術…

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