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 松山市を拠点とするアイドルグループで活動していた大本萌景(ほのか)さん(当時16)が自殺したのは、過重な労働環境やパワハラなどが原因だとして、遺族が12日、所属していた会社「Hプロジェクト」(松山市)などに計9200万円余りの損害賠償を求める訴訟を松山地裁に起こした。一方、会社側はパワハラなどを否定し、法的責任はないと反論している。

 訴状などによると、大本さんは中学2年だった2015年、農業の魅力を発信するとうたうグループ「愛(え)の葉(は)Girls(ガールズ)」のオーディションに合格。被告会社と契約を結び、愛媛県内を中心とする農産物の物販イベントやライブなどで活動していた。今年1月からはグループのリーダーになっていたが、3月に自宅で自殺した。遺書などはなかったという。

 遺族側は、会社側が未成年の大本さんを早朝から深夜まで拘束する過密スケジュールで働かせ、学業より仕事を優先するよう強要した▽脱退の希望を伝えると「次また寝ぼけた事言い出したらマジでブン殴る」というメッセージをLINE(ライン)で送るなど、パワハラを重ねた▽通信制高校から全日制高校への転学費用を貸し付ける約束を実行しなかった――などと主張。これらの行為で自殺に追い込まれたと訴えている。

 これに対し、被告の「Hプロジェクト」は佐々木貴浩・代表取締役名でコメントを発表。早朝や深夜の活動もあったものの、学業より仕事優先を強制した事実はない▽行動を注意したことはあるが、パワハラ行為の事実はない▽会社側は転学費用を用意していたが、大本さん本人が貸し付けを断ってきた――などと反論している。(藤井宏太)

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 大本さんの母で、原告の幸栄(ゆきえ)さん(42)は提訴後、松山市内で記者会見した。幸栄さんは「亡くなる当日の朝、萌景は『社長(Hプロジェクト代表取締役)に会うのが怖い』という言葉を言っていた。この言葉の意味がどういうものかは社長が鍵を握っていると思う」と述べ、裁判を通じて事実を明らかにしたいと訴えた。

 スタッフによるパワハラなどを否定した所属会社側のコメントについて、幸栄さんは「曲げずにそのまま話をしてほしい」と反論。「脱退するなら違約金1億円」と代表取締役が大本さんに発言したとする遺族側の主張も、会社側は否定したが、原告代理人の望月宣武(ひろむ)弁護士は「そう言われた、と娘さん(大本さん)は友人に話している」と述べた。望月弁護士は「なぜ16歳の女の子が死を選んだのか、腑(ふ)に落ちるものはない。お互いに持つ証拠を開示し、真実を明らかにしたい」と話した。(柳川迅)