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 昨日の敵は今日の友――。レスリング女子で五輪4連覇の伊調馨(34)=ALSOK=が14日、全日本女子オープン選手権(静岡・三島市民体育館)でリオデジャネイロ五輪以来の復帰戦に臨み、57キロ級で優勝した。その試合直前のスパーリング相手を買って出たのは、かつて同じ階級で五輪の代表権を競いあった元世界女王の正田絢子さん(36)だった。

 世界選手権で4度金メダルに輝いた正田さんは、アテネ、北京五輪の出場を目指していた。が、その都度、伊調に阻まれてきた。

 伊調の姉の千春さんとは京都・網野高の同級生。だが、馨とライバルであることから、試合前は千春さんとの会話も必要最低限に。「昔だったら、こんな風にスパーをやるなんて想像できなかった」。とことんまで戦ったからこそ、今は相手にエールを送ることができる。リオデジャネイロ五輪にも自費で訪れ、4連覇の快挙を直接祝った。

 一方、正田さんが社会人の大会に出た時には、伊調が応援に来てくれた。現在、正田さんは母校で保健体育の教員をしながらレスリング部の顧問もしている。網野はカニがおいしいことで有名で、伊調も食べに訪れるなど、すっかり仲良しだ。

 今夏も伊調が練習拠点にしている日体大が網野高に練習に訪れた際に組み合った。「休んでいた分、ここぞの一歩が出ていない。重心が少し後ろにある感じがする」。復帰戦に向け助言を送った。

 同高の生徒のセコンドにつくため、この大会に来ていた正田さんは、目の前で伊調の優勝を見届けた。「五輪は生半可な気持ちで出られるものじゃないというのは、本人が一番わかっていると思う。試合に出ながら、目指すかどうかも含めて確認をしているんじゃないかな。やるんやったらとことんやってほしい」。必要ならば、いつでも練習相手になるつもりだ。(藤田絢子)