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 9日、米ケンタッキー州ハーラン郡。失職者に職業訓練などをするNGO事務所で、支援を受けている男性(45)がソーシャルワーカーに近況を報告していた。

 男性は「ジェイ」と名乗った。一昨年9月、郡内の石炭採掘会社を解雇された。新たな職を探したが、すでに斜陽だった炭鉱での経験を生かせる転職先はなかった。「このままではホームレスになる」。不安に駆られ、助けを求めたのがこのNGOだった。

 ジェイさんは、生活保障を受けながら、短大に通った。「12月にデジタル工作機械課程が修了できそう。80キロ圏内にこの職種の募集が六つはあります」。少し顔をほころばせた。

 郡の住民の95%は白人で、3人に1人が最低限の衣食住サービスが得られる「貧困ライン」の収入以下で暮らす。失業率9%は全米平均の倍以上だ。

 2016年の大統領選では、トランプ氏はこの地で得票率85%の圧倒的支持を得た。今も人気に陰りは見られない。民主党員のジェイさんは、解雇されて2カ月後の大統領選でトランプ氏に投票した。「次もトランプ氏に投票する」。そう迷わずに語った。

 石炭が米国で最大のエネルギー源だった1950年代、ハーラン郡は輝いていた。立派な劇場やテニスコートがあり、郡には炭鉱労働者と家族ら7万5千人が暮らしていた。

 労働者向けの商業施設は今では炭鉱博物館になり、往時の一般家庭が再現されている。大型冷蔵庫、製氷器、花柄の食器――。都会の中間層にひけをとらない暮らしぶりだった。

炭鉱の衰退、むしばむ薬物

 ところが、90年代、石炭需要は下降に転じた。オバマ政権時代にはシェールガス開発が進み、環境規制が強化され、郡内の炭鉱の大半が閉山に追い込まれた。現在、郡の人口は約2万7千人。石炭産業に従事するのは約800人とされる。

 活気が陰るとともに、新たな問題を抱えた。医療用鎮痛剤オピオイドの過剰摂取による依存症の蔓延(まんえん)だ。郡の平均寿命は男性68歳、女性75歳。全国平均より7歳近く短い。オピオイド依存症は原因の一つ。最初はけがや腰痛に悩む炭鉱労働者に広がり、女性や若者にも浸透していった。

 依存症の女性を対象に、中毒の克服と社会復帰を助ける施設が郡内にある。施設長のステファニー・モズリーさん(42)も、かつては中毒患者だった。「仕事がなかったり生活が苦しかったりする現実を、オピオイドは忘れさせてくれる」

トランプ米政権のもと、好調な経済で潤う都会とは対照的に、地方は取り残され、停滞が著しい。好景気の果実は届いていない。しかし、その地方から、トランプ氏を熱烈に支持する声がいまも聞こえてくる。なぜだろうか。

 トランプ氏は大統領就任後、石…

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